「ハロウィンにかこつけてはしゃぐJKとJDなんなの?仮装と称して薄着するのなんなの?」
「若いよなぁーあのテンションはすげえと思うわ」
「寒そうだから仕舞え!基礎体温下げると脂肪が蓄えられてデブになんぞ!」
「敵視してんのか心配してんのかややこしいね」
ダンッとテーブルに叩き付けたビールジョッキから泡が跳ねる。
斜め前に座った陸遜が嫌そうな目でこちらを見た。ビールは溢してないからいいでしょ。
私の叫びもやる気のない甘寧の相槌も凌統のツッコミも、賑やかな居酒屋の喧騒に紛れていく。
なんと言っても今日は花金だ。ハロウィン以前に大人は飲みたいのである。
「…てか唯緋、せっかく呂蒙さん呼んでやったんだから」
「…う、」
「話しかけに行きな」
訂正。ハロウィンも大事です。
いつもの若手メンツの飲み会に、今日は呂蒙課長がいる。入社以来はや数年の私の片想いを知る凌統が声をかけてくれたらしい。
耳打ちされた言葉に一旦クールダウンしたが、そうだと思い直す。
私だってハロウィンにかこつけたっていいじゃないか!
「あの、呂蒙さん」
「ん?どうした唯緋」
タイミング良く席を移動してくれた凌統の席にさりげなく陣取り、隣の呂蒙さんに思いきって話しかけた。ああ捲った袖とビールが似合います課長。
「今日ハロウィンですね」
「ああ、そういえば最近かぼちゃのアレをよく見たな」
「はい、それであの……トリックオアトリート」
「ん?」
唐突すぎるとか脈絡ないとか、今はどうでもいい。
緊張して固まる私に不思議そうな顔をした呂蒙さんが、すぐに快活に笑った。
「はは、そうだな。今は菓子を持っていないな…代わりと言ってはなんだが、好きなものを頼んで良いぞ」
そう言って差し出されたのは、メニューのデザート覧だった。
「俺はちょっと手洗いに行ってくる。俺の分も好きなものを選んで良い、一口やろう。それでどうだ?」
「……はい…」
息も絶え絶えな私に、呂蒙さんは笑って肩をぽんぽんと叩き席を立った。後ろ姿が見えなくなり、私の身体が小刻みに震える。
「大人の男の慣れた感を見せつけてくるとか反則でしょあああ悔しい格好いいいい」
「いい加減うるさいですよ」