#少し背後注意



戦傷が微かに残る白い脛に鼻の頭を擦り付けるように寄せる。
薄い皮膚の下にある骨を感じながら、肌に触れるか触れないかという感触で唇を滑らせた。擽ったいのか、ぴくりと脚が揺れる。
僅かに漏れる吐息を肌にまぶすようにゆっくりと唇を上へと滑らせていく。
辿り着いた膝頭に小さな音を立てて唇を落とすと、縮込める動きで脚が引っ込められようとした。踵に添えていた手に僅かに力を入れ、それを阻止する。
目を上げると、眉根に皺を寄せて目元を赤らめ、なんともいえない複雑な表情を浮かべる唯緋の顔が視界に映った。

「くすぐったい?」
「…それも、ちょっとあるけど…」
「うん?」
「……何か、慣れないから、その…後ろ、向いててもいい?」

随分可愛い理由だなぁ、と思った。
友人としての付き合いの頃から、一線を越えた今でも彼女はこういう雰囲気に極端に慣れていないのだなと実感する。まぁ幼いときから武芸にひたすら打ち込んできたという彼女には無理もないことだと思う。
正直な話、初心なところは個人的に好みとしてどんぴしゃりだということは秘密だ。

「後ろ向いてちゃ続きができないよ」
「……う、」
「慣れない?嫌?」

続けざまに聞くと、唯緋は顔の赤を首元にまで伝染させて目を泳がせた。
普段は気丈な彼女が見せる、困惑したようないっぱいいっぱいだと言わんばかりの表情は半端なく可愛い。だから俺はついつい苛めたくなってしまう。

「慣れないなら唯緋が慣れるまでずっとやってようか」
「…ば、馬岱っ」
「うん?」

続きを促すように笑んで首を小さく傾げてみせると、唯緋は目を涙で潤ませて真っ赤な顔を隠すように口許に手をやった。泳ぎかける目をじっと見つめて逃げられなくしてやる。

「……恥ず、かしい」

掠れた声で紡がれた言葉に思いきり下半身が脈打った。勿論おくびにも出しはしない。
唯緋は限界を越えたのか、泣きそうな表情で目をぎゅっと瞑って俯いている。
彼女の反応に満足して動きを再開する。持ち上げていた脚をそっと開いて白い内腿に唇を滑らせると、おののいたように脚が揺れて声が上がった。

「やっ、馬岱、」
「嫌?」
「…っ、せ、せめて灯り消して…」
「どうして?」
「どうしてって…それが普通なんじゃ、」
「俺はどっちでもいいよ」

声にならない呻く息が図上で漏れたのを感じる。
そのまま行為を続行して、柔らかい肌に唇を落として強く吸ってみると、堪えかねた震えた声が聞こえた。
唇を離して、肌の白に目立つ赤い跡を確認しながら目線を上げる。

「…唯緋、やーらしい顔してるねぇ。気持ちいい?」

ふるりと身体を震わせて、唯緋が自分の腕で顔を覆い隠す。
笑みが浮かぶ口許もそのままに、彼女の顔を隠す腕を外すために片手を伸ばした。

一晩かけて、どうやって食べてしまおうか。




夜は長いのだ



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