なんだか寒くて目が覚めた。
ふるりと身震いを一つやり過ごし、ぼんやりと景色を見る。瞬きをすると、少しずつ視界に映るものが鮮明になった。
天井の木目と一筋の白い薄明かりに、今はまだ夜だと悟り記憶が浮上してくる。そうか、まだ夜。
息をゆっくりと吐いて軽く身を捩る。目が覚めた原因でもある肌寒さをもう一度感じたとき、隣で何かが、もぞ、と動いた。
「――」
私の何倍もあろうという大きな身体が、寝返りを打つように動いて僅かに私の方を向く。障子の隙間から入り込んだ月明かりに作られた影はまるで山みたいだ。
すぐ隣で、まだ少し眠そうに薄目を開けるその人を見ながら、ぼうっとそんなことを思った。
「…申し訳ありません、起こしてしまいましたか」
「いや、構わぬ。……寒いか」
低く唸るような景勝様の声も、静寂に包まれた夜には妙に心地よく聞こえる。少しだけ笑って、小さく肩を寄せた。
「少し、肌寒くて」
「そうか、――待っておれ」
言うなり身体を起こした景勝様は、眠いのか眉間には小さく皺が寄っているが脳は覚醒しているようで、迷いない手つきで掛け布団を払った。そのまま、そうっと私の肩まで布団を掛け、僅かに押さえる。
襦袢の帯を締め直しながら立ち上がった景勝様を寝転んだままぽかんと見上げ、はっとなって起き上がろうとした。
が、間髪入れずに低い声に制される。
「よい。お前は寝ていろ」
「景勝様、」
「もう一枚掛けるものを持ってこさせる」
景勝様の言葉に目を丸くする。
すぐに障子に手をかけた景勝様に我に返り、慌てて身を起こして裾を掴んだ。
景勝様は踏み出しかけた足をぴたりと止めて、怪訝そうに私を見た。
「あ、その、お気持ちはとても嬉しゅうございます」
「…」
「ですが、…あの、景勝様のお側に寄り添わせて下さいますなら、それで充分あたたかいの、で…」
何だか物凄く恥ずかしいことを口にしているような気がして、小さくなっていく語尾と共に微妙に目をそらす。
景勝様からは反応がしばらく無く、恐る恐る目を上げかけた途端、裾を掴んだままだった手を取られた。
景勝様の大きな手が掛け布団を捲り、私の手や肩を順に押す。 布団に入れということらしい。素直に従って再度身を横たえると、少しぎこちない動きで景勝様の大きな身体が私の隣に潜り込んだ。
唇を真っ直ぐに引き結んで、頑なに目を閉じている。こうして寝所を共にするのももう数え切れない程だというのに、照れておられるようだ。
顔中に広がる笑みもそのままに、心持ち身を寄せる。景勝様は掛け布団をまた私の肩まで上げて緩く押さえつけ、どこか満足したような顔をした。
すぐ側にある大きな身体があたたかい。穏やかな微睡みに誘われるまま、私は目を閉じる。
碧色より愛を込めて