#友愛のお話
父上は少々気難しく、神経質な所もある。だが、私や昭にとっては尊敬すべき素晴らしい父だ。私はこれから先、父上を越えることはできないかもしれない。私が父上の息子となったのはある意味天命とも言えるのだろう。
え?父上?…口うるさいのがちょっと、な。あ、最近は腰を痛めちまったみたいでさ。もういい歳だし若くねぇってのにな。…でも、ま、父上はすごい方だよ。それは多分兄上と俺が一番よく知ってると思うぜ。
司馬懿殿は誰より尊敬できる立派な方。今の私があるのは、司馬懿殿のお陰と言っても過言ではないわ。ご家族想いの、素敵な方よ。でも、だからこそ、もっと自分をご自愛して頂きたい。子上殿には…私がいる。それが司馬懿殿との約束だもの。
あら、旦那様のこと?そうね、頼もしい人よ。少し目を離せないところがあるけど。心配はないわ。私がいるのだから。これからも旦那様をよろしくね。…どうしたの?そんなに遠慮なさらなくていいのよ。あの人から目を離さないで頂戴ね。
「…愛されてますね司馬懿殿」
「…煩いぞ、馬鹿めが」
この方はこんなにも素直じゃない。なのにそれと同時に、纏う空気はあまりにも素直だ。
戦場で見る姿と、家族の方のお話をされるときの姿。違うようでどちらも同じ司馬懿殿。
自慢の上官に、私はどこまでも付いていこう。もし私がそう言ったなら、きっと司馬懿殿は鬱陶しそうな、でもちょっとだけ嬉しそうな顔をしてくれることだろう。
いつもと変わらないその顔で、ずっと。
ずっと、ずっと
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2013.3.10 哀悼