「……なっ、何もんだぁ!?」
「ねえ、ここどこなの?姉様は?」
「何処から、いや、何だテメェ……ぎゃあ!」
「あっ」
「何するんだこのガキがっ!」

とりあえず目の前の人間に話を聞こうとして触れようとしたら爪が引っ掛かっただけ、なんだけど。人間からしたらそうでもないみたい。さっきの壁くらい脆いのね。手の甲が真っ二つになって血がぼたぼた溢れてる。もったいない。でも意図してないとはいえ私が傷付けたのに腕が千切れてないから幸運だわ、きっと。

「ここはどこって聞いてるのに……」
「クソっ!」

人間が刃物を振りかぶる。遅い。咲夜のナイフの方がずっと速いわ。……投げるのと比べたら駄目ね。でもきっとこの人間は咲夜より弱いわ。

「当たらないよそんなの。ねえ、ここはどこか、私の姉様の居場所知ってるか、知ってるなら答えてよ。知らないなら知らないって言ってよ」
「はあ!?」
「『はい』か『いいえ』くらい答えられるでしょ?勇者だって答えられるんだもん。……ああ、でも村人は無理か」
「このっ……」

私の言葉の意味は伝わってないみたいだけど馬鹿にした雰囲気は伝わったらしく、懲りもせずにまた刃物を振りかぶった。
当たらないけど、何度も同じ事を繰り返すのも馬鹿らしい。

手を開く。
刃物の『目』を移動させる。
私だけに見える、触れると崩れる一点を握り潰す。

「きゅっとしてー」

刃物は罅が入って、もうすぐ壊れる。人間は気付かずに刃物を振るう。

「ドカーン」

そしてバラバラになり爆散した刃物は哀れにも人間に突き立ったのでした。
狙ってないわよ?予想してなかったから驚いてるわ。
……上手に襲えたかもってね。

「っひぃい゛、いで、た、たすけっ、」
「知ってる?姉様。レミリアって名前で紅い目で水色の髪で……」
「し、らなっ……たすけて、たすけ、目が見えな……」
「なんだ、知らないのか」

損した気分。
助けてと言っているけど相対して死ななかっただけマシだし助ける義理もないし、殺すのもめんどくさい。半身が刃物の破片で貫かれてるならほっといたら死ぬだろうし。人間だったら。おやつの後のお昼寝の後に目覚めたらここにいたから、お腹も空いてないし。直接食べるってあんまり品が無いわ。
いきなり襲われたからゆっくり見れなかったけど……。くるりと見回すとここもまた地下らしい。良かった。地上に出るための階段を探そうかと思った矢先に後ろからカツ、カツ、と足音がした。

振り向いて誰が来るのか待っていると変な格好をした、人間がやってきた。

現れた人間はいきなり変な質問をした。

「この惨状は卿がやったのか?」
「私以外に出来る人間がいるなら驚きね。人間さん、あなたは出来る?」
「無理だな。……流石にこれは」

言葉にならない言葉を発しながらのたうち回る人間を一瞥して、人間が言った。

「だったら犯人は私よ」
「そうか。卿が何かは知らないが、何が起こったかは知りたいのでね。教えてはくれないか?」
「いいよ。その代わり私も教えてほしい事があるから教えてね」
「ああ構わない。案内しよう。こっちに来たまえ」
「うん」

よく分からない人間だけど、さっきのに比べて楽しそうな人間だからいいわ。付いていってみよう。
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