目の前に二人の男。
……竜の爪の持ち主にその付き人。
付き人と言うには腕も立つし頭も切れるので些か誤解を招きそうな言い方だろうが。
……まあ、名乗られても顔も名も覚える気は無いのでその程度で良いのだ。
しかし、あの勝利を確信している目。
そういうのを見ていると中々どうして、その光を奪い取ってしまいたくなる衝動が沸き起こるのはこの身体故の悪癖だろう。
そう思わないと精神が保てそうに無い。
「それなりに楽しめた、が」
「此処でお別れだ」
だから思わず笑みが溢れるのも仕方の無いこと。
ぱちん、そう指を鳴らすと地面が炸裂して独眼竜が崖から落ちる。
「政宗様っ!」
そしてもう一人もそれを追って。
「……ああ、ついにやってしまったな」
溜息を吐いて独眼竜が落ちて行った崖を見下ろす。
これっきりにして欲しいものだ。
……死んだらこれっきり?
ああいう手合いは大抵生きていると相場が決まっている。
そして悪党を討ち果たしこの世界は平和へと近付いたのでした、などと。
「……茶番だな」
ああ勿論美しくも目出度くもなんともないがね。
そう独り言を呟いて竜の爪を拾い上げた。
六の内の一つをすらりと鞘から抜く。
良い刀だ。
独眼竜本人はどうでもいいことこの上ないが独眼竜が所持していたという逸話付きの竜の爪なら愛でる対象になるというのも不思議な話だ。
残りの人質は三好にでも適当に処分させるか。
この程度で風魔を使うのは馬鹿らしい。
その後?
好きにすればいい。
と言うよりも、どうにでもなれ、という諦めの方が大きいのだが。
それすらもどうでもいい話だ。