きっと、いつかみんなのように私も海へと沈んでしまう。
そう思って、泣くことしかできなかった。
強い強いと言われていた戦艦の金剛さんもずっと出撃していて、守って守って、守って、壊れかけて、弾も燃料もなくなって、そしてついに今日、沈んでしまった。
みんなが帰る場所を守る為に、帰ってこない人が居る。
君たちが戦うとは、そういうこと。
私が生きているということは、君たちが死んでいくのを見続けること。
提督はそう仰いました。
「叢雲、吹雪、北上、天龍、龍田、如月、球磨、隼鷹、木曾、那珂、那智、最上、山城、足柄、雷、翔鶴、菊月、瑞鳳、千歳、大潮、比叡……金剛」
「覚えて、いるんですね」
「忘れられないだけだよ」
沈んだ時の提督の顔を、見たことがありました。
平然とした顔をしていました。
声も変わらず、そのままの、いつもの、戦う時の表情を。
でも、その時旗艦だった私には聞こえていました。
むらくも、と。
最初に出会った彼女が、最初にいなくなりました。
何かが、変わったのです。
提督は思い出すように名前を呟く事がありました。
海の底へといってしまった彼女達の名前が増えていく時に、一度。
少しづつ長くなるそれを噛み締めるように、悼むように。
「…………○○提督、私も、」
「神通が沈んだら、着任直後からの私を知ってる娘、いなくなるよ」
酷い、という言葉が喉の奥で握り潰されたような。
「きっと、寂しいよ。忘れてあげないよ。他のみんなみたいに」
そんな気がして、仲間達の沈んだ海を見つめてまた泣き出した私の手を、提督はゆっくりと掴んで立たせる。
「神通」
「……」
「帰ろうね」
「……はい」
手を引かれて、ゆっくりと歩きだす。
前を行く提督の表情がどんなものだったのか、私は知ることができなかった。