家に帰ると薄暗い部屋の隅で掛け布団にくるまり膝を抱えて、顔を隠して○○が泣いていた。
陽は一番高いところにあるというのにどうしてここまで薄暗いかと言えば幾つかある窓全てがカーテンで覆われている上に部屋のライトが消されているからだ。ついでに言えば家の立地条件が悪く日が差す時間が少ないというのもあるが。
「……どうした、○○?」
暗い上に泣き声が聞こえるというのは言っちゃあ何だが気が滅入るのでカーテンに手をかけると鋭い声で阻止された。
「あけるなばかっ!」
言われた通りに大人しくカーテンから手を退ける。
少しするとまたぐすぐすと布団の中から泣き声が聞こえる。
「何か、したか?オレか若しくは他の奴らが」
「してない」
「じゃあ何でお前は泣いているんだ」
「…………」
「お前が言ってくれないとオレには分からん……」
そう言って暫く黙っていると○○は小声でぽつりぽつりと話し始めた。
「……っ……しぃ」
「悪いが、もう少し大きな声で……」
と言うと布団の隙間から手を出してこっちに来いとジェスチャーをした。
「となりっ……だけどこっちはみないで」
「分かった」
布団の塊の隣に座る。
「…………お、おきたら、だっ、だれもいなくて、くらくてっ、うぅー……」
「……」
「さがしても、っ……みつかんないし、いっつもここいるのに……」
「……」
「……さみしかったから、ないてたのっ!」
「うぉっ!?」
その瞬間○○が布団から飛び出て、オレに抱きついてきた。
「……みるなっ」
「安心しろ、見てない」
暫くの間抱きしめたままだったが未だにシャツが濡れていく感覚からして泣き続けているのだろう。
「ねぇ、リゾット、ど、どうしたら、っ……なみだってとまるの」
「知らん」
「ばかーっ……」
「…………オレ個人の考えだが、泣けないよりはよっぽどマシだ。泣けるなら泣いておけ。後、○○、お前はまだ小さい。だからもっと素直に声を上げて泣け。気付かれないように泣こうとするな。甘えろ。頼れ」
諭すように言う。普段皆と居るときは強がりなクセに、一人になるとこの子供は意外に弱いらしい。
すると胸に頭を押し付けたまま○○が喋り出す。
「なでて、もっとぎゅっとして、だいすきっていって、さみしくさせないで、なまえよんで、そばにいて。ずーっと」
「……」
取り敢えず一つ目の要望通り撫でると「もっと」と言い擦り寄ってくる。
「不器用だな、○○は」
「リゾットとおんなじだもん」
「……」
失礼な、と言いたかったが確かにオレにそんな一面があるのも間違いではない。なので黙っておいた。
「満足するまでこうしてる気か?」
「うん」
「……夕飯までで勘弁してくれ」
「……だったらきょう、リゾットのへやでねる」
目に涙を溜めながらそんなことを言われれば反論する気も失せる。それに言い出したら聞かないので好きにさせようと思う。少なくとも、今日は。