現状。ご機嫌でオレの膝の上に乗ってジェラートを食べている○○。それをどうにか宥めすかして降ろせやしないかと考えている。
別に迷惑だとか嫌だとかは思っていない。
しかし今の状態は視覚的に寒い。何故室温もさほど高くないのに冷たいものを食べようとするのか理解できない。この寒い中○○がわざわざジェラートを選んで食べているのを見ていれば自然とオレも寒くなってくる。
なので熱いエスプレッソでも飲むか、と思ったが膝の上の小さな存在を退かさないとそれが出来ない。
普段さほどオレに寄って来やしないのにこんな時には寄ってくる。今は他に誰も居ない。タイミング良く居たオレで暖を取ろうとでも考えているのだろう。

「……○○」
「なーに?」

ジェラート片手に器用に体ごとこちらに向いて笑顔で応じる○○に退いてくれと言えなくなった。

「溶けるから早く食べろ」
「……」
「……どうかしたか?」
「たべたいの?」

どうしてそうなる、と思わず口から出そうになったがどうにか堪えた。

「……そうだな」

そう答えるとジェラートに突き刺されていた小さなスプーンを抜いて一口分よりも少し大きめに取ったそれを突き出してきた。
スプーンを受け取ろうとするとひょい、と手を引っ込める。

「ちがう。くち、あけてくれないとリゾットにたべさせれない」
「ああ……成程。そういうことか」

大人しく口を開くと○○は「うふふー、あーん」という気の抜けた言葉と共にジェラートを放り込んできた。

「おいしいでしょ」
「甘い」
「だってジェラートだもん」

冷たいと甘さは抑えられるはずなのに、この甘さか。
オレとしては歓迎し難い甘さのせいで余計にエスプレッソの苦味が恋しい。

「ね、ね」
「何だ?」
「あーんってして!」

いきなりカップを渡された。

「同じようにやればいいのか?」
「そうだよー」
「分かったから膝の上でそうはしゃぐな……」

ジェラートを掬いとって○○の口へ運ぼうとした瞬間、ぼたり、と。

「わっ!?」

○○の太腿にジェラートが落ちた。

「ど、どうしよう?」
「下手に動くと余計に汚れるぞ」
「うごいちゃいけないならどうすればいいの?」
「……」
「!?」

何の気も無しに落ちて溶けかけたジェラートをべろりと舐めとった。
……やった後に思っても意味は無いが、一体オレは何をしたかったんだろうな。

「そんなにおいしかった?」
「……あのな」
「ならまたプロシュートにかってもらおうっと」
「……とりあえず、タオルを取ってくるから退いてくれないか?」
「ん?うん。ごめんね」

あっさりと○○は膝から降りて問題は解決した、のか?
大きな爆弾を抱えてしまった気がするんだが。
タオルを取りに行く途中でも未だに甘味が残っていた。

「やっぱり甘いな、コレは。好きになれやしない」

舌に残る甘さに意識をやってしまって、無かったことにできればそれが一番楽なんだがな。
ああ、それよりも○○への口止めが先か。
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