◎阿相様から相互記念!


Cold hearT




「まったく、馬鹿は風邪引かない、なんて嘘だよね」



そう言ってヒョウタは深々と溜息をついた。


その手には、俺の熱を吸ってすっかり温くなったタオルが握られている。




「悪ィ、ヒョウタ、忙しいのに…」


絞り出した声は枯れていて、我ながらひどいもンだ。




「良いよ、ジムなんかより、君の方が心配だもん」


だけど本当に不安そうなヒョウタの優しい声と、いつもは冷たい手が、今日はやけに心地良かった…。







《Cold hearT》






事の始まりは何だったか…そう、確かアフロを海に沈めてやろうとした時だったっけ。



奴のバトル熱があんまり熱かったからついウザくって…ナギサの海に突っ込んでやろうと背中を押したら、ヤロウ、人の服の裾掴んでやがって…







「それで、一緒に落ちた揚句、君だけ風邪引いたって?」

「うん」

「まったく…!!」


馬鹿じゃないの、と顔をしかめながら、話を聞いていたヒョウタは俺の額へ少々乱暴に濡れたタオルを置いた。



心配して損した、と表情に書いてある気がすンのは気のせいですか?



…まぁ、夏も終わりを告げ、そろそろ本格的に寒い季節だし、海水浴って時期じゃないのもよーく分かってはいるが、









「…でも、たまには悪くねーな。
ヒョウタが心配してすっ飛んで来てくれた」

「もう、馬鹿な事言ってないで、ちゃんと寝ててよ。
喉、痛くないの?」

「すっげー痛ぇ」


言って、にへら、と笑って見せると、呆れた様なヒョウタはしかし、少し悲しそうな顔で俺の濡れた前髪を掻き上げてくれる。




その手は水を触ってたせいかいつもより冷えていて、今度は俺が顔をしかめる番だった。


「ヒョウタ、手…」

「え?あ、ごめん、冷たいよね」

「いや、」



そうじゃ、ねぇ。


俺はヒョウタの手を両手で包んで、ぎゅ、と握り締める。







「ごめんな、俺の為に、こんなに冷やしちまって…」
「ううん。
僕の手が元から冷たいのは知ってるでしょ?…大丈夫」

「けどさ、」



言い淀むと、スル…と俺の手からヒョウタの手が抜けて、俺の髪を優しく撫でて行く。


「大丈夫。僕はこれくらいしかして上げられないからね。
君が弱ってる時くらい、僕に頼ってよ」






ニッコリと笑って、また温くなったタオルを取り上げたヒョウタは、そっと俺に口付けた。


「ん…」




それは、触れるだけの幼いキス…。


たった数秒だけ触れ合って、更に数十秒を見つめ合う。






「早く、デンジくんが元気になりますように…」



唇の触れ合う距離でヒョウタは囁いて、ゆっくりと離れて行った。







「っ、た、ただのおまじないだよっ…?」



それから、急に慌てた様にサイドテーブルに置いた水桶でタオルを濯ぐヒョウタの顔は、熱のある俺並に真っ赤になっている。












「ありがとな、」










…手の冷たい人は、心の暖かい人だと、聞いた事がある。




じゃあ、いつも手の暖かい俺は、心の冷たい奴なのか?とか反発して、全然信じてなかったけど。










『もしかしたら、その通りかもな…』





だって、ヒョウタはこんなにも、暖かい。










-END-



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阿相様から頂いた、素敵な伝票文です!
阿相様、このような素晴らしく可愛らしい伝票と萌を有難うございました…!

これから宜しくお願い致します^^*



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