「許容範囲な犯行※注意」


「ん…?」

夜分遅くにジムの仕事を終え、我が家に帰宅したトウガンはふと違和感を感じた。
家の鍵が開いているのだ。
今日の早朝に家を出たときにちゃんと鍵をかけたはずなのに。

(ヒョウタが家に帰ってきたのか…?)

そうだったらいいんだがな、と、愛する我が子に対する少々の期待をしながら家のドアを開ける。

「ただいま…」

玄関は暗闇に包まれ、辺りの物が何も見えないほど暗かった。

(そりゃ、そうだよな…アイツが連絡も無しに家に帰ってくるわけないよな)

少しの希望と期待が外れ、少しだけ切ない気持ちになったトウガンは、泥だらけの長靴を脱ごうと前屈みになり長靴に手を伸ばそうとした。
その時だった。


「トウガンさあぁ〜んっ!」

どこか聞き慣れた高い声が聞こえたと思ったら、何者かにのし掛かられ、トウガンの体に温かくも重々しい負担がかかった。

「な…!」

暗くて何も見えないトウガンは酷く動揺する。

「ゲン…!」

「ふへ、仕事お疲れさまです!」

トウガンにのし掛かってきた犯人はゲンであった。
ゲンは、疲れきっているトウガンの身体などお構いなしに全体重をトウガンの背中に乗せ、口元がにへらと歪んでいる非情に厭らしい笑顔を見せながらトウガンの腹筋へと腕を伸ばす。

「…っの、てめぇだな、私の家の鍵を開けたのは!」

「あはは、まぁ良いじゃないですか…」

ゲンはそう言うと、トウガンの耳元に目掛けてふぅ、と息を吹き掛ける。

「っあ…」

一瞬にしてトウガンの身体の力が抜け、ガクリと膝がくすんだ。

「…相変わらず、耳が弱いんですね…」

かわいいな、とトウガンを茶化すゲンに怒りと照れ隠しの鉄拳が殺那の速さで顔面に飛んできた。

「…放せ、どけ、こうてつじまに埋めるぞヒモ野郎が」

「…ごめんなさい、だからお願いしますそばに置かせてください」


この時、トウガンは恐怖と羞恥によって動悸がいつもに増して酷くなったという。

fin.
小説初書き厳冬!
やはり文字だけで世界を生むのは難しい…
続くかもしれません。
ここまで読んでいただき有難うございました!

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