「素敵な暇の潰し方」


ああ、暇だ。
まぁ、暇であることがいつもの事なのだけど。
今日は(今日も、だろうか)ナギサジムへの挑戦者は現れないだろうという俺のプロ級の勘を理由にしてジムを閉鎖した。
第一、挑戦者が現れたとしても大した実力を持った相手ではないだろう。
そういえば以前に上記の事をアイツに言ったら口より岩石並みに固い拳が飛んできて「せっかく挑戦しに来てくれたのになんて事を言うんだ!」なんて激怒されたっけな。
アイツの意見はごもっともだが、この言葉は未だにイマイチ俺の思考では理解できない。挑戦者に感謝、だなんて俺にはできないだろうな。絶対。

「…デンジ君」

噂をすればなんとやらとは良く聞くが、(噂なんてしてないけど)あの言葉を産み出した人に何らかの賞を捧げたいと思った瞬間だった。
そして前言撤回、今から俺は「暇」じゃなくなった。

「よぉ」

「何が『よぉ』だよ!また君ったらジムを勝手に閉鎖したんだね?何度同じこと繰り返せば…」

「どうしたんだよ、連絡も無しに。お前らしくもない。」

「え?…ああ、今日はナギサシティのちかつうろの点検と修理をしに来たんだ。そのついでに…って、話の流れ変えないでよ!お願いだから僕の言うこと聞いてっ!!」

相変わらず口の減らない奴だな…正直面倒くさいとさえ思ってしまう程だ。
…でも、そこがまた可愛くて大好きなんだけど。

「ヒョウタ」

「…何?」

「おいで。」

「…、」





…まだまだヒョウタも俺に甘いな、わざわざ説教しに俺の所まで来たってのに、今じゃ俺の膝の上に座ってやがる。(いわゆるツンデレのデレ期ってやつ?)
この妙な単純さが癖になって、ヒョウタの事をからかうのやめられないんだよな。
そう考えると、俺もヒョウタに甘いんだろうな、色んな面で。

「…デンジ君、」

「何?」

「…こんな事してて楽しいのかい?」

「もちろん。ヒョウタのケツ太ももに当たって気持ち良いし。」

「…っ!!変なこと言わないでよ!!」

こんな冗談をかまして(ヒョウタのケツが気持ち良いことは事実だけどな!)ヒョウタが俺の膝から脱け出そうとしたから逃げられる前に思いっきり後ろから抱き締めてやった。
自然と俺はヒョウタにのし掛かる体制になってしまった。

「…やめてよ、重い。」

「でも、温かいだろ?」

「…うん、温かい。」


陽気な天気の今日
何気に陽当たりの良い俺の部屋で
ヒョウタと二人きり
しかも二人とも密着して
微かにヒョウタの温かい心臓の音が聞こえてくる
(俺の心臓の音もヒョウタの中に響いてるのかな?)

何もかもが温かい。
(さっきまで暇だ暇だと嘆いていた自分が馬鹿らしく思えてくる程だ)

このまま時が止まればいいとは思わなかったが、こんな幸せな気持ちで居られる一時をこれからもヒョウタと一緒に過ごせたらいいなと思えた。

「ヒョウタ」

「ん?何?」

「このまま昼寝していい?」

「…うん、いいよ」

「ヒョウタも一緒に寝ようぜ」

「……うん」

陽気な天気の今日
何気に陽当たりの良い俺の部屋で
ヒョウタと二人きり

(今度は夢の中で逢えるといいな)



これが俺流の、素敵な暇の潰し方。


fin.
いつの間にやら長くなってしまった!
こいつらの日常はこんなんが良いなぁとか思って綴りました。
これが日常ってどれだけスイートライフ送ってんだ…

読んでいただき有難うございました!

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