私は寝不足だった。
昨日泣きはらしたせいで目のまわりは赤いしもう。


「はぁ…」


正直学校には行きたくなかった。
この目を見られたらなんと言われるか。





「ちょっ…!?アンタどうしたのその目っ!」

案の定である。
そうとう酷いのか、友達がびっくりしたように声を上げ、教室の一部がざわついた。
なに?やっぱりそんな酷い?
ううん、どうしたものか。

「ペットのミネ(ハムスター)が死んだというか」

そっか、それはつらいね。悲しいね。と何人かが私に言葉をかける。
とりあえず乗り切れたけど、まじごめんミネ。



みんなが散っていくなか、政子だけが私の前に居て、ぼそっと嘘でしょ。と言った。


さすが私の親友と言うべきか。
とりあえず苦笑いして適当に流した。



それからの授業もあまり集中できなかった。
この状況で当然といえば当然かと思うけれど。


「なまえー?」
「あっ、ごめん何?」
「何か悩んでるのは分かるけどさ、体育くらい集中しなよ。なまえ好きでしょ」
「…うん。大丈夫、なんでもないよ。ありがとう」
「…嘘」
「え?」
「なまえってさぁ、肝心な所嘘つくよね。たまには自分に素直になんなー?」


この友人は…。私が知らない私にも気づいてるんだから。


「私が気づいてるんだから、風君なんてもっと分かってると思うけどね?」
「なっ、」


なんでっ…!





ガンッ!





「…っだ!」
なんか頭にぶつかった。
痛い。なんなのよもう。
そこから私の記憶は途切れた。









あったかい。
懐かしい匂いがする。
何だろう、落ち着く。



「…ふぇ……」
「起きましたか?…なまえさん」
「…!?」


風君!?


「なっ、んで…!」
「今病院の帰りなんですよ」
「え?え?」
「なまえさん、頭にボールが思い切り当たって病院に運ばれたんです。病院で一旦目を覚ましてお医者さんに受け答えしてましたけど…覚えてません?」
「覚えて…ない…」
「…そうですか」
「で、でもなんで風君が…!」
「呼ばれたんです政子先輩に…」
「…は?」

なんでそこで政子がでてくるんだ。


「なんで政子が風君のアドレス知ってんの」
「中学が同じ部活だったのですが…ご存知ありませんか?」
「知らない…」
「…あ、えっと…今日、怒鳴られたんです、なまえさんを泣かしたでしょうって」
「…ぁ」
「私としたことがすっかり忘れていました。…あなたは肝心な事はいつも嘘をつく」
「…っ!」



何もいえない。
だって、本当なんだもの。



「なまえさん、私は…なまえさんの事が好きです」
「…っ…」


風君の背中は広くて、大きくて。
れっきとした男の子だった。
そうだ。
むかし、私が怪我をした時風君が今みたいにおぶってくれて、…それで、同じ事を思って。そして、気づいたんだ。



私は、風君のことが。


「嫌い」
「…」
「私は嘘つきだから」
「…」
「風君の事が世界で一番大嫌い」
「…それは…」
「本当の言葉はまだ私ははずかしくていえないから…」


好きなんてはずかしくて言えないの。
ひどいのは分かってるけど。



「私、風君より子供だから分からないんだ。どうしたらいいか。だから」
「なまえさん」
「うん?」
「キスしてもいいですか?」
「うん!?」
「返事はそれでいいですから」









「で?どうなったの?」
「うっ…」
「したの?」
「ししてない!」
「うっわあ、最悪」
「だって…まだ…!」
「まだってアンタ、どんだけ風君生殺しするの」
「で、でもっ……変わりに抱きしめたよ、うん」
「アンタって子は…」
「あっ、そろそろ風君と帰る時間だ!じゃーね政子」
「はぁ…。まあ、なんだかんだで2人とも幸せそうだからいいけどさ」



少しずつ素直になれるように。



「風君お待たせ!」
「なまえさん、ではいきましょう」
「あ、ねぇ風君!」
「はい?」
「手、繋いでみる?」


まずは小さな一歩から。


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