家に帰るまでに返事を考えればよい。


そう考えていた私はつくづく甘かった。
そうだよ恒例だよ。ー風君が私の高校まで迎えに来るのは。
中学校はうちの学校と近いのもあって。


「帰りましょうか、なまえさん」

びくり、と肩が揺れた。
今日位は迎えに来なくても良いのに畜生。


「あー…」


無理だ、気まずいし、答えまだ考えてないし無理無理無理!


「わ、私今日は先に帰る!」


風君の横をダッシュですり抜ける。
ああもう、何やってんの私は!






「はぁ…」


風君が見えなくなったくらいにため息をついた。
だってさ、答えを迷ってるって私なんなの。
風君の事を好きだった事は今までも今も変わらない事実じゃないの。
…でも、やっぱり付き合いたいとは思った事がなかったのに、風君と付き合うのは彼に対して失礼なのだ。
…考えても変わらない。
ならいっそ、それを言ってしまおうか。


「…そうだよ」



好きだけどそれ以上がよく分からないって率直に伝えればいい。
風君はいい子だから、それだけで幻滅なんてしない。
大丈夫、大丈夫。


「よ、よし!」


私は帰り道を逆走した。









会ったらどうしようか。
まずさっきの事を謝って、それからー…。

少しすると、風君らしき人影が見えた。


「風君……、……え」



私は目を見開いた。
風君が、知らない女の子と抱き合っていたから。



「あ…」
「なまえさん…!?」

風君がこちらに気づいた。
慌てる素振りをする。

「なまえさん…!これは違…」





ああ。





「なんで弁解するの?私には関係ない事だもん。…じゃあね」


そこを笑って去ってしまった。





痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
心臓が痛い。苦しい。涙が出る。気持ち悪い。



「結局私はどこまでも馬鹿なんだよ」





その滑稽さにお腹を抱えて笑う



本当、私ってなんて滑稽。




背中まで手をまわしていたのは女の子だけなんて、私は知らない。


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