「風君ー」
「はい」
「今日お父さんとお母さんが旅行行った」
「は、」



今朝、鞄に服を詰め込んでいた両親。
なんだなんだと聞いてみれば…。

「今日から3日旅行に行ってくるわね」
「え」
「風君がいるから大丈夫よね?むしろ最後までいっちゃってもお母さんは大丈「何の話かな!?」



会話を思い出して顔が熱くなった。
ぱたぱたと手で顔を仰ぐ。
本当に何を口走っとるんだ、うちの母親は。



「なまえさん?」
「え、あ、うん。ごめん、そういうわけなのよ」
「そうですか」
「うん、だから今日は私がご飯作るね」
「…嬉しいです」
「え?そう?お母さんの方が絶対美味しいのに」
「なまえさんの、というのが嬉しいんですよ」


くすくすと笑う風君。
ったく、ドキドキするじゃないか。


「まったく、何を言ってるんだか」
「なまえさんは?」
「え?」
「私と一緒は嫌ですか?」
「え、そんな事ー…」
「あ、もしかして好きな人がいて誤解されるのが嫌とかー…」
「馬鹿ねー、そんなわけないでしょ。好きな人なんか居ません」
「本当にですか?」
「え、うん」
「本当に本当ですか?」
「あー、珍しくしつこい!本当に本当だよ!!」
「ふふ、そうですか」
「…風君が好きだよ」
「…え?」
「なんて、うっそー」
「…」

ぽかんとする風君。


「そうだな、弟みたいに好き」
「…私もなまえさんを姉のように好きですよ」

風君はにこりと笑って言った。

「とりあえず、私は今そーゆー好きな人はいないし!」
「はいはい、そうですね」

くそう。
くすくすと…!



おどけるわたしも空言ばかり




好きなんて嘘。というのが嘘なんて言えない。


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