「ねぇ、風君」
「どうしました、なまえさん」
「うんと、ね」


風君は私の1つ下の近所の男の子だ。
私は高校1年生で、風君は中学3年生。
風君のご両親は仕事が忙しいから、昔から私のうちでよく面倒をみている。
これがまたできたお子さんで、成績優秀スポーツ万能。
そして、…正直、昔から私よりずっと大人な男の子だ。


「…?なまえさん?」
「あ、ううん、えっと…お母さんが今日はカレーだって言ってたよ!」
「そうなんですか、楽しみです」
「うん」
「……」
「……」
「ねぇ、風君」
「…はい?」
「…。あ、あのね!好きな子がいるって聞いたんだけど本当?」
「…そんな噂が流れているのですか…」



風君はすこしびっくりした顔をしていた。
風君は人気者だから、噂は高校でも小耳に挟むのだ。
すごいな風君。


「風君は人気者だねー」
「そんな事ないです」
「で、実際は?いるの?好きな子」
「…うーん」


風君はぴたりと止まって、私の顔を覗きこんだ。


「どっちだと思います?」
「……うーん」

考える振りをする。
…この覗きこむ仕草は計算なのだろうか。いや、天然?
どっちにしろ可愛いぞこのやろう。



「んー…、いない!」
「どうでしょう?」
「どっちよ?」
「じゃあ、いませんよ」
「…じゃあって何よ」
「だから居ませんよ」



…嘘の癖に。




うそぶくあいつは嘘ばかり



ごまかしてる事なんて分かってるよ。何年一緒だと思ってるの。


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