おっきくなったら、結婚しよう。

その小さい頃に交わした小さな小さな約束は、果たされる日がくるのだろうか。






帰ろう。家に、帰ろう。
そう笑って、空港に行って、飛行機に乗る。
イタリアって遠いね、ちょっと寝させてもらうわ。
日本に着いたら起こしてフラン。



なまえ、なまえ。



そう言われて、目が覚めたのに。
私の隣に居たはずのフランは居なかった。


「フラ…」
手には気づくと紙が握られていて。
紙をひらくと、フランの文字で手紙が書かれていた。



ーなまえへ。

ミーはまだ家には帰れません。
ごめんなさい、なまえはせっかくミーを取り戻してくれたのに。
でも、ミーは…いつまでも子供じゃないから。あの約束が守れるくらい大人になるから。

だから、待ってて下さいー。

フランー



「な…に、それ…っ!」

ピピピピピピピ…


…携帯?

「はい、なまえです…」
「あ、なまえ?」
「綱吉お兄ちゃん!?どうして…」
「そろそろ日本に着いた?」
「うん…今。…それよりフランが!」
「うん、その事で電話したんだけどー…、フランの事なら俺が責任持って預かってるから安心して」
「フラン…!…そっちにいるの?」
「うん、大丈夫だから」
「でもフラン…」
「ごめんね」
「え?」


プツン。


「…ふ、ら…んっ」
アイツも罪な男だね。どんだけ私に涙を流させる気よ。



待ってる。待っててあげる。
…帰って来たらどうしてやろう。
一発殴ってやろうか。ああ、一発じゃ少ないなー。

…早く帰ってきなよ、フラン。









「お母さんお母さん、リボン曲がってないよねー?」
「うん、バッチリよなまえ」
「そう?よかったー」


今日はついに私が卒業する日。

「卒業かー…早いなー」
いいや、長かったか。あなたがいないこの日々は。

あれから2年たって。ついに私も高校卒業だよ。
綱吉お兄ちゃんから定期的に連絡あるし安心だけどさー…たまにはアンタの声聞かせろっての。


「まったく、フランは」


私だってさ。会いたいし、気持ちだって伝えたいんだよ馬鹿。









「卒業証書授与」


あー…普通ここはしみじみとして泣くとこなんだろうけど…卒業証書授与長いよ眠いよ。やっべ、寝そー…


「みょうじなまえ」
「ふぁいぃ!?」


やっば一瞬寝てた変な声だしたみんな笑ってるー!
は、恥ずー…。ばーかって誰か言ったな、うるさい!

顔を真っ赤にして壇上に上がる。



「〜〜〜〜」
校長先生の言葉も耳に入らない。
やー、もー穴があったら入りたいよ。


卒業証書受け取って、会場の方にぺこりと礼をする。


顔を上げて驚愕した。


「フランッ!?」


「はいー」

背が伸びて、声も低いけど、でもフランだ。

フランは壇上の下まで来た。



「馬鹿…今まで何してたのよ」
「ミーの手で…、あの親父と決着つけてきましたー。不本意ながら…綱吉兄さん家で修行してねー…」
「っ…」
「なまえー。今日何の日か知ってますー?」
「私の卒業の日じゃなくて」
「じゃなくてー」


あ、そうだ。



「フランの、誕生日だ」
「ピンポーン。ミーは18歳になっちゃいましたー」



一般的に、18歳は…結婚できる歳。



「ミーは修行して、なまえを守れるくらいにはなりましたよ」
「うん…」
「あの約束…もう守れるくらいなまえには大人に見えますかー…?」
「う、んっ…」
「じゃーなまえー」


スっとフランは手を広げて。



「結婚しましょー?なまえ」
「…!」




私はフランの腕の中に飛び込んだ。





ーかくして、小さな頃の出会いと約束から生まれた物語は、これにて終わりと始まりを迎えましたとさー


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