おっきくなったら、結婚しよう。
その小さい頃に交わした小さな小さな約束は、果たされる日がくるのだろうか。
*
帰ろう。家に、帰ろう。
そう笑って、空港に行って、飛行機に乗る。
イタリアって遠いね、ちょっと寝させてもらうわ。
日本に着いたら起こしてフラン。
なまえ、なまえ。
そう言われて、目が覚めたのに。
私の隣に居たはずのフランは居なかった。
「フラ…」
手には気づくと紙が握られていて。
紙をひらくと、フランの文字で手紙が書かれていた。
ーなまえへ。
ミーはまだ家には帰れません。
ごめんなさい、なまえはせっかくミーを取り戻してくれたのに。
でも、ミーは…いつまでも子供じゃないから。あの約束が守れるくらい大人になるから。
だから、待ってて下さいー。
フランー
「な…に、それ…っ!」
ピピピピピピピ…
…携帯?
「はい、なまえです…」
「あ、なまえ?」
「綱吉お兄ちゃん!?どうして…」
「そろそろ日本に着いた?」
「うん…今。…それよりフランが!」
「うん、その事で電話したんだけどー…、フランの事なら俺が責任持って預かってるから安心して」
「フラン…!…そっちにいるの?」
「うん、大丈夫だから」
「でもフラン…」
「ごめんね」
「え?」
プツン。
「…ふ、ら…んっ」
アイツも罪な男だね。どんだけ私に涙を流させる気よ。
待ってる。待っててあげる。
…帰って来たらどうしてやろう。
一発殴ってやろうか。ああ、一発じゃ少ないなー。
…早く帰ってきなよ、フラン。
*
「お母さんお母さん、リボン曲がってないよねー?」
「うん、バッチリよなまえ」
「そう?よかったー」
今日はついに私が卒業する日。
「卒業かー…早いなー」
いいや、長かったか。あなたがいないこの日々は。
あれから2年たって。ついに私も高校卒業だよ。
綱吉お兄ちゃんから定期的に連絡あるし安心だけどさー…たまにはアンタの声聞かせろっての。
「まったく、フランは」
私だってさ。会いたいし、気持ちだって伝えたいんだよ馬鹿。
*
「卒業証書授与」
あー…普通ここはしみじみとして泣くとこなんだろうけど…卒業証書授与長いよ眠いよ。やっべ、寝そー…
「みょうじなまえ」
「ふぁいぃ!?」
やっば一瞬寝てた変な声だしたみんな笑ってるー!
は、恥ずー…。ばーかって誰か言ったな、うるさい!
顔を真っ赤にして壇上に上がる。
「〜〜〜〜」
校長先生の言葉も耳に入らない。
やー、もー穴があったら入りたいよ。
卒業証書受け取って、会場の方にぺこりと礼をする。
顔を上げて驚愕した。
「フランッ!?」
「はいー」
背が伸びて、声も低いけど、でもフランだ。
フランは壇上の下まで来た。
「馬鹿…今まで何してたのよ」
「ミーの手で…、あの親父と決着つけてきましたー。不本意ながら…綱吉兄さん家で修行してねー…」
「っ…」
「なまえー。今日何の日か知ってますー?」
「私の卒業の日じゃなくて」
「じゃなくてー」
あ、そうだ。
「フランの、誕生日だ」
「ピンポーン。ミーは18歳になっちゃいましたー」
一般的に、18歳は…結婚できる歳。
「ミーは修行して、なまえを守れるくらいにはなりましたよ」
「うん…」
「あの約束…もう守れるくらいなまえには大人に見えますかー…?」
「う、んっ…」
「じゃーなまえー」
スっとフランは手を広げて。
「結婚しましょー?なまえ」
「…!」
私はフランの腕の中に飛び込んだ。
ーかくして、小さな頃の出会いと約束から生まれた物語は、これにて終わりと始まりを迎えましたとさー
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