なまえの存在は、あの出会った日からミーのすべて。

いきなり来て、それを奪うんじゃねーよ。





「お父さんっ、お母さん!私、フランを助けに行く」
二人が帰って来て、すぐに事の顛末を話した。

「駄目だ、なまえには危ない。ここは父さんが…」
「フランのお母さんは私の親友よ。母さんが行くわ」


誰がフランを助けに行くか争奪戦。
ねぇ、フラン。やっぱりフランは愛されてるよ。あんな親父よりよっぽどね!

…でも、お父さん、お母さん…。
悪いけど、これだけは譲れないよ。


「お父さんとお母さんは仕事があるじゃない」
「「う゛っ」」
「確かに危ないけどさ…きっとすぐ帰ってこれるわけじゃないし…仕事はやすめないでしょう?」
「しかしだな…」


「二人共…ゆびきりげんまんって知ってる?」
「ええ…」
「昔、フランと約束したよ、フランが私を呼んだらフランの所に絶対行くって」
「…なまえ」
「私が行けないなら、私針千本飲むから」

これは本当。冗談なんかじゃない。
…私は、そのくらい覚悟してる。



「…………明日、一番の飛行機で行きなさい」
「お父さん…」
「なまえ…これ、昔聞いたミオリフェッテファミリー本部の地図よ」
「お母さん…」


「そんな奴に可愛い私達の息子はやらん。…なまえ、頼むよ」
「…っ、はいっ!」







「そう睨まないでくれよ」
「………」

睨むな?何言ってんですかコイツは。

「ミーを家に帰して下さいよー」
「帰しただろう?…此処に」
「ふっ、ざ…け…っ」
ギロリと更に睨む。


するとソイツはミーに近づいてきて、頭をガッと掴んだ。

「っあ…!」

やめろよ頭皮傷むだろ馬鹿ー。



「それ以上口答えしたらお前が住んでた家のやつらを殺るからな」
「…!っつ…」


なまえっ…。








此処がイタリア…。

「フラン…」
お母さんがくれた地図を見て歩く。
お母さんは知ってたんだな、フランの事。お母さんによると、フランがマフィアの後継者というものになるのを恐れてフランのお母さんはフランを連れて逃げたらしい。

フランのお母さんのためにも、助けなきゃ。









「此処がフランのいるミオリフェッテファミリー本部…」


え、デカ!


デカすぎんでしょーよ。
きっとこんな所住んでたから頭おかしくなったんだよ、うん。


「えっとー…インターホンどこかな…?」
ピンポーンってやつ。


…ねぇ。


「いいや、勝手に入ってやるんだから」
ギィッと音を立てて、でっかい門を開けた。



「お邪魔しまー…」
ガチャ。


…何の音?
頭に違和感を感じてちらりと横を見ると。



…銃が向けられていた。


「きゃああ!」
『お前、そこで何をしている』
「じゅ、じゅ、銃っ!?」
『質問に答えろ』
「あ、あいきゃんとすぴーくイタリア!?えーっと」
『撃つぞ』
「ひいいぃぃ!」




「はいはーい、ストップね」
「…ボス」
「…!」
フランの、お父さん。


「あー、やっぱり来ちゃったんだ」
「フランを返して」
「返すも何も…元々私のだ」

ニコッと笑う。
…私の?

「…けんな」
「ん?」
「ふざけんな…っ、フランは誰のモノでもないっ。フランはフランのだっ!」

あー、涙出てきた。
必死になると涙が出てくるもんなんだね。



「…そんなきれい事言われてもなー」
「うっさいうっさいうっさい、この誘拐犯!フランを返せ返せ返せ返せー!」
「…五月蝿いな」
「…え?」


ガッ。あてがうとかそんなもんじゃなくて、殴るとかそんな勢いで、その人は私の額に銃を当てた。

「…っだっ!」


痛い。


「それ以上五月蝿くすんなら、この場で殺すぞ」


スッゴいスッゴい怖い目で私を見た。


…あれ?
ガクンと腰が抜けて、血の気ひいて声も出なくて。


「……っ」

フラン。




そのまま私は門から追い出された。


フラン…フラン…フラン…!


「う…あ…う、うあああああん!」
涙が止まらない。
フラン、私はフランを助けられないの…?
あんな小さい頃にした約束さえ守れないの…?




「…日本人?」



私が後ろを向くと、そこには茶色のツンツンした髪の男の人がいた。


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