まだ6歳の小さい私。
一人っ子でちょっとワガママで、パパとママが大好き。
そんな私の所にフランはやってきた。


「なまえ、この子はフラン君」
「フラン…?」
「お母さんの、親友の、息子さんなの」
「へぇー」

お人形のように顔が整ったフランの顔を、私は興味津々に見ていた。

「今日から、フラン君はなまえの弟よ。一緒に暮らすの」
「おとーと?」


同い年。でも、産まれた日が私より後のフラン。
でも、どうして私の弟?どうして一緒に暮らすの?
分からなかった。でも、そんなこと子供の私は分からなくて。
純粋に嬉しかった。兄弟が出来たその事実が。


「フラン、私はね、なまえっていうのよ。よろしくね!」
「…なまえ…ちゃん?」


にへ、と私に笑ったフラン。
私はその時の笑顔を鮮明に覚えている。

もしも時を戻せるなら、この時がいい。
ああ、かわいかったなー。あの時のフラン。


…それが、どうして。



ドカッ。
「いだっ!」
「なまえー、邪魔なんですけどそこー。ここまで邪魔だなんて太ったんじゃないですかー?あ、元からかー」


どうしてこうなるのよ!





「聞いてよっ、私の弟また今日もっ!」
「またなまえの弟君?面白いねぇー」
「あいつ本っ当に生意気」
「ねーねー、噂(アンタからの)に聞く弟君ってどんな顔してんのー?」
「あ、写メあるよ」
「わあ、見たい見たい」

リクエストにお答えして、データフォルダからフランの写真を漁る。

「いつの?小さい頃?」
「なんでよ普通に今だよ今」
「最近のというと…これか」
「どれどれー?………はぁ!?」

携帯を覗き込んだ晴香(友人)が素っ頓狂な声をあげた。

「誰これ!」
「マイブラザー。ちゃんと2人でうつってるじゃん」
「じゃなくて、誰このキレーな外人さん!」

…あ、そっか。

「フランと私は血繋がってないよ?」
「めっちゃ今更!」
「フランはお母さんの親友の息子さん。小さい頃うちに来たの」
「へぇー。なんで?」
「さぁ」

フランはお母さんの親友の息子さん。
私が知ってるのはそれだけだ。

「なんで今まで暮らしてて知らないの?」
「フランは私の弟に変わりはないしさぁ…」
「普通気になるけどね、いい子だなぁ…なまえは」
「え?へへ…」

よく分かんないけど、褒められた。


「でもこんなにキレーだと意識したりしない」
「確かにキレーだとは思うよ?うん」
「いやいや、なんてゆーかさ、男として見ちゃうとか」
「フランは男だよ?」
「……。だからね、ほら、弟だけど好きになっちゃうとか」
「フランはああだけど、弟だし好きだよ?」
「違くて、愛の方」
「あ…愛!?ないないあり得ない!」
「そーだよねー。なまえだもん」
「むぅ!」

男として意識しないってそりゃあそうだが!
私だからってなんでやねん。関係ないじゃんよ。








「ただいまー」
「おかえりですなまえー」
「うん。フラン、ちょっとココア淹れてちょ」
「自分で淹れやがれ」


あはは、うん。…この生意気弟が!

「フラン!あんた、それがお姉ちゃんに対する口のききかたなの」
ぐいぐいとフランの頬を引っ張る。

「やめて下さいー」
「いーから、ごめんは!」
「だってミー…なまえを姉だと思った事ないですもんー」

な ん で す とぅ !?


「こ…の…」
「え、なまえ…?」
「クソバカ弟ー!」

ドカッ!

「ゲロッ!」
「ゲロッて何よカエルか、このクソバカカエルー!」


あんたは家族で家族で姉弟で弟で。
私はずっとそう思ってたのに。
フランは違かったの!?
悲しい、悲しい。そう、想いをぶつけて…私はフランを思いっきり殴ろうとした。
そうしたら、フランは簡単に私の攻撃をいつの間にか大きくなった手のひらで受け止めた。


「……!」
「馬鹿は…なまえの方ですよー…」
「な…」
「いいですよ、そろそろ変わりますから」
「ちょ、フラン…?」



「そろそろミーも頑張りますから」



そう言ってフランは部屋に帰った。訳分からん!





私はいつまでも姉のつもりだったが、弟はいつまでも可愛い弟のままでいてくれないらしい。


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