「…分からないよ」

気が付くと、涙がぼろぼろと溢れていた。
なんでそこまで必死になるの?
私になにがあるの?
なにもないでしょう?
あなたに見合う程の何かが私にある?
あるわけないでしょう?

そんな私に執着するのなら。


「…ごめんなさい」
「…それは、どういう…」


私はあなたの人生を狂わせてしまったんだ。
婚約者が居るという事は名家か何かだろうか。
そんな家に生まれて、綺麗な婚約者が居て。
容姿も才能も全てを持っていて、きっと望めば何でも手に入れられるあなたが。
その権利を放り出して私なんかを愛してくれるなんて。

ねぇ、私は最悪だよ?
風君の為に諦めると決めておいて、こんな風に気持ちが揺らいでしまう優柔不断な奴だよ?
…でも。


「私で、いいの…?」


震える声を絞り出すように出した。
あのね、あのさ、私…それに甘えてもいいのかなぁ。


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