「…風、君…っ」
私はベッドの上でうずくまっていた。
明鳴ちゃんみたいな綺麗な子が現れたら、私は風君から身を引くと決めていた。
それを決めたのは、まだ憧れが残っていただけの…ただ風君を好きになりたかっただけの私。
…でも、今は。
「うぇ…うえぇぇん…っ!」
苦しくて、痛くて…涙が止まらない。
明鳴ちゃんは可愛くて綺麗で、風君と並んだ姿は見とれてしまうくらいに素敵でお似合いだった。
それがどんなに、私にとって苦しかったか。
馬鹿だ、私は。
決意したじゃないか、身を引くんだ。
所詮風君と私は月とスッポンだ。
水面にうつる月を愛でて終わるだけの、本当の月には触れられないスッポンのように、私もあの頃の…風君を見ているだけで幸せであったあの頃に戻ろう。
たとえ風君が私を好いてくれているとしても。
「………」
風君の未来の幸せの為には、きっとそれが一番なのだから。
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