うちの親族は広く、日本には「雲雀」の名を持つ親族が居た。
交流の始まりは、その代々続く由緒正しいその家系に、うちの本家の娘が嫁入りしたことが始まりらしい。
なんでも日本に観光に来て、雲雀の家にとてもよくしてもらったのだとか。


…年に一度、基本的に殆どの親族が本家に訪れる。

雲雀の家の方になかなか会う機会は無かったけれど、初めて会う機会が出来たのが、9歳の時。
一週間の滞在のうち、雲雀の方と2人で話す機会が出来たのが、3日目の夜だった。
…実はその時を、ずっと待ちわびていた。


「…こんにちは」
「こんにちは、君は風…だね」
「はい。…あの、急にこんな事を言うのは良くないと思うのですが…次の機会がいつか分からない以上、今言わせていただきたいのです…」
「…ん?」
「私を…っ、雲雀の家に入れて下さい…っ!」







「あれからもう…8年は経つのかな」
「…そうですね」
「私があの時言った事を覚えているかい?」
「…はい」




そうだね、此処はずっと居るにはとても窮屈な場所だ。
将来何になって、誰を嫁に迎えるか。
そんな皆が当たり前にもっている選択肢さえ与えられない。それはとてもつまらなくて、苦しいかもしれない。
けれどね、風。君はまだ幼い。
一時の感情でそれを判断するにはまだ早いんだ。
…だからね、風。
いつか大きくなったら日本に来るといい。その時はうちが協力しよう。
そしてその時、本当に「雲雀」に、「日本」に住みたいという理由ができたなら、君を雲雀の一族に入れられるよう私も最善を尽くそう。




…それが、あの時言われた言葉。



「理由が、できたんだね」
「…はい」
「…好きな娘でもできたかな?」
「な、んで…っ!」
「ふふふ、そのぐらい分かるさ。…風、どんな事でもいい。その娘について聞かせてくれるかい?」
「…、はい!」



…なまえさんが、大好きだ。

それが、私の理由のすべてなのだから。


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