今日はいつもより幾分早く学校に来た。
「許せない、許せない許せない許せないっ…!せっかく私達が忠告してやったのにあの女…っ」
「でもあの人なんか怖い…。雰囲気が…」
「何言ってんの、多勢に無勢なんだから私達が有利に変わりないじゃない」
「そうよ、もっと派手に…」
「随分楽しそうですね」
「!?…風、君!」
全ては、彼女を守るために。
「何を話しているのですか?」
「何でもないわ。…行きましょ」
「うん」
「またね風君」
「行かせませんよ」
彼女達が行く方向に先回りした。
…このまま見過ごす気はない。
「なまえさんが昨日スリッパを履いていた事、頬が変に赤くなっていた事…貴女方の仕業ですね」
「ちが…っ」
「私は貴女方が普段している数々の事に口を出すつもりはありません。それは貴女方が独断で行動している事で、私には関係がありませんから。けれど、なまえさんをそれに巻き込むなら話は別です」
「…私達はそんな」
「なまえさんを傷つけるなら、私は貴女方を許せません」
私は何を逃げていたんだろう。
彼女達にばれないようにと気を配るくらいなら、いっそなまえさんをずっと守りきるくらいの気持ちを始めから持てばいいものを。
「…なんで、なんであの子だけ特別扱いするの…っ」
「好きだからです」
「……っ」
「なまえさんは私をまだ好きになってはくれませんが、私が勝手に好いているんです。振られても諦められないでいるんです。どうです、私はかっこ悪いでしょう」
「…風君なら、あんな子選ばなくても、もっと可愛い子選べるんじゃないの。なんでそこまで…」
「なまえさんがいいからです。なまえさんが、どうしようもなく好きだからです」
ああ、どうして。
なまえさんの事を想うと、温かい気持ちになれるのだろう。
「…後悔したって知らないんだから!」
彼女はそう言うと、走り出した。
「あ、待ってよ!」
「どこいくのー!」
それにならって、他の2人も追っていった。
…後悔なんて、するわけない。
そう考えた瞬間、コツ…と足音が聞こえた。
「や、アイドル君」
「…あなたは、なまえさんのご友人の…」
「茅流っていうよ、どうぞよろしく」
「よろしくお願いします。一年の時同じクラスでしたよね」「よく覚えてるね。…と、まあさっきの拝見させて貰ったよ」
「…そうですか」
「ただのヘタレだと思ったけどやるじゃん」
「はは…ありがとうございます」
「でもさ、なまえが風君を好いているわけじゃないなら未だにちょっと君となまえがいるのは反対なわけよ、私」
「…はい」
「でもまあ今日頑張ったみたいだし…今の所保留かな。だけどね…もし、なまえを傷つけたり泣くような事一度でもあったら、なまえをあんたに近づけないし、あんたの一番痛いとこ蹴るから」
「…肝に銘じておきます」
「じゃーね」
彼女はきっと、なまえさんを大切に思っている。
本当にそれがあれば私となまえさんを近づけないだろう。
…大丈夫、なまえさんを…二度と傷つけたりはしない。
守って、みせる。
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