その日はずっとぼーっとしていた。
上手く物事を考えられない。
それなのに、脳内はずっとフル稼働していてひたすら風君の事を考えていた。
シャワーで体を洗い流しても、思考はそのまま頭にとどまったままだ。


好きだと言ってくれた。


私はなんなのだろう。
風君の気持ちに今答える事はできない。
この状態で付き合うなんて、冗談じゃない。まず風君に失礼だ。
私は風君が好きだったけれど、所詮は薄っぺらな憧れによる好意だ。恋愛のそれとは、程遠い。


「馬鹿だなぁ、あたし」


私の小さく呟いた声は、独りきりの浴室にはよく響いた。

それはまるで、私に聞かせるようで。


「…私は」

風君は言った。
私を、風君の事を好きにさせると。
私は…私はできるなら。恋愛として。

「風君の事を好きになりたい」


それが許されるなら…その日が来たら、私にあなたを好きにならせて下さい。
でも、もしもあなたの前に素敵な人が現れたら、私は自分のその時の感情に関わらず、大人しく身を引こう。
それが、風君を傷つけてなお優しさを与えられた私の、せめてもの償いになるだろうから。


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