「大丈夫ですかー?」
「うん、平気」
私は今脚立の上に立っている。
因みに風君が支えている。
先生から、掲示板に掲示物を貼るように言われたので、画鋲で貼り付けている所だ。
「…あの」
「んー?」
「これ普通逆ですよね?」
「いやいや、私が支えるとかマジ無理だから。風君の命握ってると思ったら手が震えまくってむしろガタガタ揺れるね」
因みに私今スカートの中にジャージをはいているよ!
「んー…画鋲がうまくとれないなー」
すでにある掲示物で取っていいと指示されているものを取っていくけれど、なんだか上手く取れない。
「大丈夫ですか?」
「うん、だいじょう…ぶっ?」
うっかり画鋲に夢中になって前のめりになってしまい、バランスを崩した。
私馬鹿じゃん!
衝撃を予想して目を閉じ、縮こまった。怖い!
すると突然、強い力で抱きしめられたような感覚に陥り、そのあと小さな衝撃があった。
「…っ」
「風君!?」
私を抱きしめたのは風君だった。
落ちる私を風君はキャッチしたけれど、なんせ慌てていたし、急いでいたから私を抱きかかえたまま転倒…という事らしい。
慌てて起き上がり、風君に呼びかける。
「大丈夫!?風君、風君!…っ!」
すると、ゆっくり起き上がった風君が、再び私を抱きしめた。
その力があまりに強くて、私は少し痛みに眉を寄せた。
「…風君、痛いよ…っ」
「…た」
「え?」
「良かった、なまえさんが、無事で…っ!」
風君の私を抱きしめる手は、震えていた。
「風…君…」
「…すき、です」
「…え」
「好きです、なまえさんが、好きです…っ!だから、なまえさんが危ない目に合うのは嫌なんです…っ!」
好き。
私があんなに好きで好きで愛していた風君からの、夢にまで見た愛の告白なのに。
…でも、それは所詮…、私の感じていた好きは。
「風、君…」
「…はい」
「ごめ…んなさい…っ。私、私…風君の事好き、だけど…っ、私の好きは…芸能人へのそれと多分、同じ…だから…っ」
私は、風君の気持ちに答える事ができない。
「ごめ、んなさい…っ」
好きが違うのは、私だった。
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