風君が好きだ。
愛している。
だからこそ、責任をとってもらうなんて付き合い方は絶対したくない。
「結構多いねぇ」
「そうですね」
場所は図書管理室。
時刻は放課後。
パチンパチンとひたすら資料をホッチキスで止めている。
先生これ普段の授業のじゃないですか?
30人しか居ない選択国語の資料の数じゃないですぜ。
「これ終わったらこの箱の辞書戻すそうですよ」
「うげ、これも明らかにうちらの授業のじゃないじゃんね。まぁ、いいけどさ」
「そういえば、みょうじさんは国語がお好きなのですか?」
「んー、国語というか、本が好きなんだ。日本語ってさ、色々な表現あるでしょ?一人称だけでいっぱい。そんな表現豊かな日本語で書かれた本って、凄く臨場感あって面白いの。風君はどうして国語選んだの?」
「私は中国の出身ですから、日本の文化や言語に興味がありますし…なにより私も日本の言葉や本が好きなんです」
「そうなんだー。ねぇねぇ、何読むの?」
そうやって、好きな本について話して、今度お互い貸し合おうかなんて話してる間に資料をまとめおわった。
ああもう、こうしてるだけで私は幸せだわ。
「うぐ、辞書重ー…」
「そんなに沢山持たなくても…全部私がやりますよ?」
「ううん!私もやる」
「じゃあ半分持ちます」
「いやこれ以上風君持ったら…ぎゃ!?」
「わ…!」
やりとりしているとバランスを崩してしまった。
んおぉ…風君の前で「ぎゃっ」とか言っちまったよ…せめて「きゃあっ」だろ…。
「んぁっ…」
「…あ」
変な声が出た。
ナニコレキモイ。
よくよく見ると、倒れた拍子に、風君の手が私の胸に触れていてですね。
…これなんてエロゲ?
「ど…いて…」
「わ…、す、すみません!」
慌ててのいた風君。
私も起き上がって、座り込む。
「…あの」
なんか力入んない。
いや、確かにびっくりしたし、あんな声出したのも初めてだ。
でも胸にかかった圧力的にも痛みの方がでかい。胸に力入れると…痛いよね…。
「…すみません」
「え、いや、あの!」
考えていると風君が思い切り頭を下げた。
違う!ショックで放心してたとかじゃないから!
「風君これは事故だし、私別に平気だから。そもそも私が一気に辞書持ったのが一番悪いもの」
「でも…」
ぐ、と風君が唇をかんだ。
そんなに思い悩まんで下さい風君。
心が…苦しいよ…。
「私は大丈夫だよ。ごめんね、気に病ませてしまって」
「…みょうじさん」
「ん?」
「私、責任とります」
「…は?」
「だから…結婚しましょう」
…はあ?
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