そんなこんなで、二次試験が始まるのを待っている状態なんですけども。

 建物の中から、獣の唸り声……のような2人のお腹の音が聞こえる。
 なんでこんな大きいのだろう。お腹に拡声器でも飼ってるのかな?

「すごい唸り声ですね」
「そうだね」

 ……うーん、試験の内容を知っているから下手な事言えない。
 そういえば、ゴン君とクラピカはまだみたいだな。……戻ってくるまで、キルア君のとこ行こうかな。

「ちょっとお出かけします」
「また?」

 ギタラクルさんだからあまり分からないけど、なんとなく冷ややかな視線を感じなくもない。

「第一次試験の時、キルア君の前から変な言い訳で居なくなっちゃったから。ちょっと声だけかけてきたくて」
「そう」
「二次試験始まる前には戻りますので、絶対、多分」

 どっちなの、という指摘が入る前に移動する。
 戻る気はある。あるけど、いつイレギュラーが起こるか分からないのがこの場所だ。





「キルア君!」

 後ろから飛び付くと、キルア君は驚いたように一瞬目を丸くさせた。猫みたいでかわいい。

「トルテ! お前あの時どこに……」
「一応、近くにはずっと居たよ。だから今も此処にいるでしょ」
「……なぁ、トルテ」
「うん?」
「トルテは、ハンターになりたいのか?」

 私が何故ここに居るのか知らないキルア君からすれば至極普通な質問である。

「いや、特には。……キルア君は?」

 じゃあなんで、とか返ってくる前に質問してしまう。……私は大人だ。それなりに嘘はつく。
 それでも、親しい人と目を見ながらの嘘が上手い訳ではない。なんとなく、表情に出さない訓練をその内受けさせられそうだなと思えてきた。すごく嫌だな。

「オレもべつに。……試験が難関って聞いて、面白そうだと思ったから。今の所拍子抜けだけど」
「……そっか。キルア君、この試験が……楽しいものになったらいいね」

 面白そうだと試験に参加したキルア君は、きっと友達が出来て沢山話して……なんて想像してなかった。
 でも、友達が出来るから。友達と笑い合うから。それはきっと、楽しいって事だから。

「……うん」

 これからもっと楽しい事が沢山あるから。
 ……けど。

「なぁトルテ、さっき言ってたなまえって。トルテがうちで名前付けられたやつじゃない方の名前?」
「……うん、そうだよ。だから、キルア君にもここでは呼んで欲しいと思った」
「トルテはペットとか言われてたけど。……なまえは、なんなんだ」

 トルテだろうが、なまえだろうが、私は私で別にそれぞれの役割とか考えた事もない。
 トルテはHNでなまえは本名くらいの感覚だったのだけど。……あえて言うなら、そうだなぁ。



「キルア君の、多分4番目位のお友達」



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