「はぁっ、はぁっ……」

 ひたすらヒソカさんを追って走る。
 獣やらの死体がゴロゴロ転がっているのが見える。……トラップが排除された塗装された道を歩いているようで非常に楽だ。

 マチボッケの中から強引に出て思ったけれど、案外ここの捕食者達は力ではなんとかなる。ゾルディック邸で戦闘実践として戦った侵入者の方が強かった。
 けれどここの捕食者達は一流詐欺師だ。騙されると非常に時間のロスだし、場合によっては私よりずっと弱くても私を殺せるかもしれない。……つまり。

「超イージーモードで試験受けちゃってるなぁ、私」

 ラッキーだし、助かってるし、他の人も協力したり手助けしてもらったりしてるんだし。別に気にしなくてもいいんだけど。

 ……私、この試験に勝ち上がる資格あるのかなぁ。







「ギタラクルさーん」
「トルテ、遅かったね」

 湿原を抜けると、既に到着していた人の中にイルミさんが居たので声をかける。

「迷子になったり色々あったんです」
「家帰ったら探知能力も上げないとかな」

 さらりとメニューを追加されて、ヒェッと声が漏れた。帰りたくなーい!
 私が顔を引きつらせていると、ところで、とイルミさんは付け足すように口を開く。

「ヒソカに文句は言えた?」
「あ、はい。まぁ……」

 腑に落ちないような煮え切らないような微妙な私の返事に、イルミさんはただふぅん、と答えた。

「本当は一発殴りたかったんですけど」
「は?」
「トランプ投げつけられたの腹立ったから殴りに来た! とは言えたんですけど、それ以上はなんとも出来なくて。ヒソカさんが怪我人担いでたってのもあるんですけど冷静に考えて殴るだけじゃ済まないし時間も無いし、軽率でした。今すべき事じゃなかったです」

 不貞腐れ気味にそう言う。
 口にした事は全部反省点。ほんと、軽率だ。
 打算や……不本意ながら親近感とか。そういうのがあったにしても酷い。やっぱり元の世界で過ごして随分気が抜けちゃったかな。だって、あっちの世界私より強い人居なかったんだもの。
 銃を持ち出されても、毒を盛られてもなんとかなっちゃったんだもの。最早核兵器でも持ち出されない限り死なない自信さえあった。
 だからかな。駄目だ、もっとちゃんと切り替えろ私。ここでは私、きっと簡単に死んじゃうんだから。
 ……私がかつて手にかけた、あの人みたいに。
 死に怯えながらも死ぬまで生きるのだとあの時決めたのだから、それを絶対に忘れるな。


 ……とまぁ、そんな非常に真面目な事を考えていたわけなんですけど。
 イルミさん、なんかギタラクルさん特有のカタカタが少し強くなってない?

「大丈夫ですかギタラクルさん。なんかカタカタがでっかくなってますけど」
「別に。……トルテはさ」
「はい」
「馬鹿だね」
「はい?」

 馬鹿にされた?
 憐れまれた?
 分かんないけど、分かんないけど!

「……今回は、反論の余地もないです」


 ぐぬ、と歯に力を込めながら言うと、イルミさんは本当に馬鹿だよねと言った。
 追い討ちはやめて!


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