「あははは!」

 どうしようかな。こんな時どういう顔をすればいいんだろう。笑えばいいとおもうよ!

「笑い事じゃない!」

 思わず頭を抱えながらしゃがみこんだ。何処からか沢山の悲鳴が聞こえてくる。
 この悲鳴は、命の消える音。……そう思うとぞくりと寒気がする。
 私はつい目の前の事に気を取られて、他が疎かになる悪い癖があると思う。……私の世界じゃそれでも充分なんとかなったけれど、こっちの世界で何やってるんだ自分。
 持久力無いくせに、前方まで見失って。
 ……ああもう、だからハンター試験なんて嫌だったのに!

 ……悪態とか恐怖とか苛立ちとか、沢山頭に浮かぶけど。


「何とかしなきゃ」

 大丈夫。だって私は死にたくない。死にたくなくて足掻く事だけは得意だ。

「大丈夫」

 絶対、私は死なない。
 そう思いながら、震える手を強く握って押さえつけた。







「でぇい!!!」


 ……死ぬかと思った! 死ぬかと思った!! 死ぬかと思った!!!

 走っていたらマチボッケに食べられ、内側から攻撃して吐き出された私です!
 身体がベタベタする。お風呂に入りたい。
「んあ? ……だ!?」

 べたべたを拭きながら歩いていると、トランプが飛んで来たのでキャッチする。……2枚目はひどい!

「2枚目は酷い!」

 どうせ、100%ヒソカさんだ。
 とりあえずそのまま感想を述べる。さっきと今、合わせて二枚!なんて酷い!!

「何すんですか」
「さっきまで試験官ごっこしてたからオマケだよ」

 ヒソカさんはレオリオを抱えている。……原作であった試験官ごっこの後らしい。


「迷惑ですけど」
「君はイルミと一緒に居ないのかい?」
「途中まで一緒だったんですけど……ヒソカさんがトランプ投げたから」
「うん?」
「一発、殴りに来たんですよ」

 試験官ごっこの後だからか、少し発散できたのと、青い果実を2人見つけたであろうヒソカさんの殺気は先程よりずっとマシだ。
 ……常に嫌な感覚が纏わりつくのは、恐らくデフォルトなのでこの際別として。

 だからだろうか、ヒソカさんの目を見ながらまっすぐそんな事を口にしてしまった。
 そして。


 ーーーひぇっ!
 殺気、増えた。……いや、殺気というか。楽しそうな……? いやいや駄目駄目、この人の場合楽しいと殺意の境界線がほぼ無いんだから!


「なんで文句言いに来て喜ばれなきゃいけないんだ……」
「君が楽しませるからじゃないか。……それで、やりたい?」
「嫌、ですね。……そもそもヒソカさん、私が戦いたくない人ナンバーワンなんですよ。それに怪我人抱えた人殴る趣味は無いです」
「うん、ボクとやったら君死ぬだろうしね。ボクとしてもまだおあずけしておきたいなぁ。……だけどさ、なのに何で来たのかな?」
「殴りたかったからですけど」


 私達の会話は平行線だ。
 我ながら言っている事が矛盾しているとは思う。馬鹿だ、馬鹿にも程がある。
 けど、戦いたくなくても一発殴りたかったんだからその時の感情は仕方ない。というか、なんだろう……あのトンネルダッシュ中に幾らか話したから少し親近感でもわいたのかな。頭も沸いてるな。
 あとは、会った時からだけど割と私の事を気に入っている気がする。イルミさんと一緒に居る女という興味も込みでだろうけれど。

 だから多分、今は殺さないだろうなという打算込みで今のうちに一発入れとくか、とアホな事考えたのだ。……いや、ほんとアホだな。


「とりあえず次の試験会場の場所、ギタラクルさん伝いなら私にもおこぼれお願いします!」
「ついてこれる? ……抱えようか?」
「結構です!」


 ここから多分、そう遠くない。
 持久力は無いがそれはそれ。


「なんとか死ぬ気で追いかけますね」


 死なないけどね。


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