「成る程…大体の話は分かりました」
「信じて下さるんですか?」

この亡者が言った内容とは、簡単に言うと私達の住むこの地獄の様子が書物として読まれている世界があり、この亡者はその世界に生き、そして恐らく死に絶えたという事だった。

「私の名前は獄卒の方達の口から耳にしているわけですから知ったかぶりもあり得ます。けれど茄子さんや唐瓜さんの名前を知っていたというのは不思議ですし…そもそもあなたの生前の記録が此処に無い時点でおかしいんですよ」
「えっと…?」
「つまりですね、此処はあなたにとって異世界の地獄に当たるわけです。どこのファンタジーだとは思いますが、そうなると全ての辻褄が合うんですよねぇ…」
「なーるほどー!…って、ええぇっ」
「どうしましょうねぇ、あなたの処遇。見たところお若いですし親御さんより先に亡くらなれてそうですし…賽の河原でジェンガでも積んどきます?」
「ジェンガ!?」
「ああ、それとも…あなた女性ですし虫苦手そうですよね。きっと殺した事ありますよね?等活地獄行っときます?」
「いやいやそんな、とりあえずこの辺行っとく?みたいな感じで決められても…!」

とりあえず妥当な線を口にはしているが、実際にはそれらを執行する事は出来ない。
何故なら記録が無いから。
記録が無い罪に対して罰を執行する事は出来ない。

「…あなたの記録が無い以上、刑は執行されませんよ」
「本当ですか…?」

微妙に涙目になっているのは、どのような事をされるかを大まかにでも知っているからだろう。

「ええ、しかしあなたの行いが分からない以上天国にやることも出来ません」
「じゃあ…私はどうしたら」
「そうですねぇ……、…此処で働いてみますか?」
「…へっ?」


prev - next


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -