「記録の無い亡者が来た?」

突然の報告に閻魔大王第一補佐官である鬼灯は眉をひそめた。

「そんな筈無いでしょう、生者である頃の行いは全て記録されている筈です。きちんと確認したのですか」
「そうはいってもさ、何人もの獄卒で膨大な量を確認し直したし…ワシがその手のミスした事は流石に一度も無いでしょ?」

確かに鬼灯が補佐官になる以前の事までは分からないが、記憶にあるうちには一度も無かった。

「大体なんですぐに言わなかったのですか?」
「君休みだったでしょ?しかも徹夜明け。流石にこれ以上は酷かなあってねぇ…」
「結局私にまわってきて負担になってるじゃねぇか」

これ以上ないくらいの低い声に閻魔大王はゾクリとした。
ああ、後々どんな恐ろしい事をされるやら。

「とりあえずその亡者を此処へ連れて来てもらいます」





「いーやー!離してー!」

例の亡者はぎゃあぎゃあと煩く喚きながら獄卒に連れられやってきた。

「鬼灯様、連れてきました!」
「こいつですこいつ!もう暴れる暴れるー…」
「ご苦労様です。…さて」

連れて来られた亡者は、そこそこに若い女だった。
きっと若くして亡くなってしまったのだろう。

「こんにちは、恐らく貴方は亡くなりました。…が、私も先程調べましたが貴方の生前の記録がー…」
「ほおずきさま…?」

連れて来られた記録の無い異例の亡者は、目を丸くして私の名前を呼んだのだった。


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