本の虫というのをご存知だろうか。
本が好きで好きで、沢山読む人をそう呼ぶそうだ。


私は本の虫だ。
本が無いと生きてはいけない虫だ。
私の中は物語で溢れている。
私は毎日物語を自分の中に取り込んでいる。
まるで食事のように。
上質な物語ほど私に満足感を与えるのだ。
食事と何が違うのだろう。
私の中の世界は、こんなにも素敵なもので満ちている。


「まるで寄生虫だな」
「うるさい、だまれリカー」


私が本の虫ならば、リカーは私の虫だ。
私に寄生するようについて離れない虫。


「いや?べつに僕は喋らなくてもいいんだよ。実際僕は喋らないものだからね。でも君が僕に喋って欲しいと言うから」
「私は喋って欲しいなんてあなたに言った覚えはない」
「ああ、言ってはいないね。でも考えてごらんよ、君が僕に話しかけてほしいから、君は僕を作ったんじゃないか」


そう、リカーは他人に認識できる個体ではない。
私が想像で作った、私にしか見えない虫だ。

つまりは、リカーは私の妄想上の存在だ。



「1人が寂しいんだろう」
「そんな事ない」
「寂しいなら作ってしまえばいい」
「…は?」
「私を作ったように、今度は世界を作ってしまえばいいんだ」
「何…言ってるの」



そんな事をしてしまったら、私は。



「きっと楽しいぞ、お前だけの王国だ」


このまま、本に埋もれてただ生きるだけならば。


「そうね、それならー…」


私の愛するお話の世界を。


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