「…ん?」
何の気なく、その辺を歩いていた。
すると、少し向こうの方にフラフラとした女性が居た。
「どうかしましたか?」
放っておくわけにもいかず、とりあえず話しかける。
「え…あ…えっと」
かなりおどおどした女性だった。
言葉はしどろもどろで、目線は泳いでいる。
「えっと、いきなり知らない所に来てしまって…私…」
「どこから来たか分かりますか?」
彼女は僕をじぃっと見た後に呟いた。
「……そもそも、此処は日本ですか?」
「…日本?って、街の名前かな?」
「………」
彼女が泣きそうな顔になってしまった。
何がいけなかったのだろう…。
「とりあえず、あまーいキャンディーでも食べますか?」
「…ありがとう」
キャンディーを受け取って、彼女はペロペロと舐めだした。
…少しは落ち着いたかな?
「名前を聞いてもいいですか?」
「…なまえ…です」
なまえ?
「…あなたの名前は?」
改めて彼女をまじまじと見た。
…たしかに、幼い頃僕と遊んでくれたあの子に顔立ちが似ている。
目元、口、髪色…そして、なまえという名前。
「あの…?」
…ずっと憧れていた僕のヒーロー。
なんて弱々しくなってしまったのだろう。
まるであの頃の僕みたいな表情をして…。
ああ、そうか。
「ごめんね、僕はレムレス」
「レム、レス…」
「とりあえず、僕と一緒に来ませんか?」
今度は僕が、あなたのヒーローになってみせる。
prev - next