「ぎゃあああぁぁぁっ!」
私は今、通路をダッシュしている。
此処はシェゾの家…だった筈なのだが、私の部屋の前の通路から階段を下りたら、おそらくあの地下牢に来てしまったようで。
アルルは16歳の時此処に閉じ込められて、出るべく冒険していたじゃないか。
つまりー…。
「私は侵入者じゃないわよ!」
「ふにぃ?」
リュンクスやウィルウィプスが私を追いかけながら、くいっと首を傾げる。
…いやまぁ、ウィルウィプスの首傾げは分かりづらいけど。
リュンクスの首傾げは確かに可愛い。可愛いけど…!
「私は魔導が使えないのよ!?」
確かにまぁ、リュンクスやウィルウィプスはUでは序盤の敵だ。
それでも私には勝てるわけがない。
「ええい、いちかばちか!アイスストーム!」
私は魔導物語のアルルのように手を上に上げた。
…が、しかし…あったのは沈黙となお追いかけてくるウィルウィプスとリュンクスの姿だけであった。
「もー!どうせ私は魔導士じゃないわよー!」
もう、どうしたらいいこんかねこれ!
「…リュンクス、ウィルウィプス」
「ふに?」
「落ち着け。こいつは侵入者や脱走者ではない」
モンスター達はなーんだという感じで戻っていった。
…随分あっさりとしている。
「…シェゾ」
「何だ」
「何で地下牢に繋がってるって言ってくれなかったの!?」
「お前は未来が見えるのだろう」
「少しって言ったし、私は万能じゃないし…自分の未来は分からないのよ!」
噛みつくように言うとシェゾは、はぁとため息をついた。
「な、何よ」
「俺はいつでもお前を殺せるんだぞ」
「っ…」
取り出した闇の剣を首にぴたりとつけられる。
「…や」
「………」
「冗、談…」
いや、目が…本気だ。
「…止めて下さい、私…死にたくない」
「…俺はべつに、お前が死のうとどうだっていい」
「…ひどい」
「言ってろ」
「あなたはひどい人だ」
「そんな事…あの日からとうに知っている」
「……」
「まだお前は殺しはしない」
「……」
「アルルの魔力を奪うまでは」
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