「そもそも、なんであなたは私を呼び出したんですか。異世界人に何の用ですか」
「異世界では別の分野が発展していると聞くからな。俺が知らない魔法を使う魔導師から魔力を頂くのもいいと思ったんだ」
「あー…」
こいつは私…つまりは異世界人の魔力が目的だったわけだ。
残念ながら魔導師なんていない世界に居た私に魔力なんてあるはずもない。
「とりあえず、貴様の魔力を俺にー…」
「言っておくけど、私の居た世界は魔法なんてないですよ」
「な…!?」
心底驚いたという顔をしている。
彼にとって魔導は自分の1部であり、それが無いなんて有り得ないと感じていたのだろう。
言うなれば息をするのとそう変わらない感覚なのかもしれない。
「私に魔力は無い、…だからさっさと元の世界に戻す呪文を手に入れて私を元の世界に戻して下さいよ!」
「…魔力が無いならば生かしておく理由もない」
「はぁ…!?」
「ここで野垂れ死ぬか今俺に殺されるか好きな方を選べ」
言いながら剣を向けてくる。
や、闇の剣…。
「え、えぇ…いやそんな物騒なぁ…」
「五月蝿い、この魔法の為に金と時間を大量に費やしたんだぞ」
そんなもん知るか!
と言いたい所だが、目がマジだ。
…やばい。
「待って!わ、私魔力は無いけれど…」
「けど?」
「す、少しなら未来が分かるの…」
分かっている。
私は作品を知っているだけ。
臨機応変には対応できない…危険な賭だ。
「ふん…例えばなんだ」
「あなたはアルルに負けます」
「なんだと?」
「しかもバージョンによっては…、おっと…これ以上は」
「バージョンって何だ!?」
98版なら首ばっつんだもんなぁ。
こわいこわい。
「私はキミを助けられるかもしれませんよ」
「いらん」
「……!」
やっぱり厳しいか。
「お前の助けはいらん。さっきから発言があまりに失礼だぞ。ガキが…」
「そっりゃあ…180歳なあなたに比べれば私なんてガキでしょう」
そう言った途端、シェゾの表情が変わった。
「…なぜ」
「合ってる?…シェゾ・ウィグィィ。ああ、そうですね…たしか意味はー…」
「!…もういい」
「……」
「まだお前を認めるわけじゃない。だが、しばらくはうちにおいてやる」
「…お礼は言いませんから」
「元より望んではいないさ」
帰る、絶対…帰るんだ…私のいた世界に。
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