「抜かされちゃった」

ビル百階建てにも勝る果ての無い髪を見て、そう笑うとゴンさんは「何が?」と聞いた。


「髪の毛」


ゴンさんがゴンだった頃、よく私の髪を触っては「なまえの髪すごくさわり心地がよくて大好きなんだ」と言ってくれた。
単純かもしれないけれど、私は髪を伸ばした。一つに結んでも腰くらいまであった。


「オレの髪は長いけど、髪の毛も筋肉になっちゃって、固くてはつまらないよ」


ああ、なんて悲しい。
髪の毛まで筋肉なんて人の限界を超えた存在だ。
私の目尻がじわりと熱くなるのを感じる。
すると、ゴンさんは私の髪をひょいとつまんだ。


「オレはこの髪がいい」


そう笑ったゴンさんに、私の顔が赤くなってしようがなかった。


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