「なまえ」
「…キルア君」
帰ろうと歩いていると、キルア君に出くわした。
「…見た?」
「見た」
私に歩み寄る少年は、ついさっき、人を殺めたヒトゴロシだ。
「怖くなった?」
ちょっと悲しげな顔で私を見たキルア君に、私は首をふった。
普通なら、一般的には、通常なら。
ヒトゴロシのキルア君が近づいてきて、泣き叫ぶかもしれない。
竦み上がるかもしれない。
恐れおののくかもしれない。
腰が抜けるかもしれない。
だけど私は、異常で精神不安定な私は。
「綺麗だと思った」
「…は?」
「キルア君もキルア君の殺しも」
綺麗で、あまりに美しくて。
「私もキルア君に殺されたいぐらい」
そう笑うと、キルア君は戸惑った顔になった後。
「相変わらずお前はおかしい」
「うん、知ってる」
「オレを、昨日まであんなに接したオレが人を殺すのを見て、死というものに恐怖して欲しかった」
(お前はオレとは違うから。まだ光のある場所に居るから。だから、オレは、なんか、お前を助ければ少しは許される気がして。なのに)
「オレはお前を余計に異常にさせただけなんだな」
「キルア…くん」
どうして、泣きそうなの。
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