「オムライスでいい?」
「なんでもいいよ」
チラリと横目で少年を見る。
全身を赤に染めたその小さな少年は、私よりも深い闇を抱えてるようで、私はあれ以上反論をする事が出来なかった。
「…うまい」
「良かった」
もぐもぐと食べる少年に、自然に笑顔になる。
…あれ?
「…味薄かった?」
「ううん」
少年は胡椒だか塩だかをかけていて、私は首を傾げた。
「じゃあなんで?」
「これ毒だよ」
…は?
「家に居ない間もちゃんと慣らせって言われててさぁ」
帰ってすぐに独房行きはないなって。
そう言う少年に、私は目を見開いた。
この少年が。小さな身体の少年が。
「…毒、なんて」
「毒殺されないように。毒で戦いに不利にならないように」
「…そんな状況になんて」
「なるよ」
だってオレ殺し屋だもん。
その私より小さな小さな少年に対する私の無神経さに、私は早くも呪文が言えない状況に苦しんだ。
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