ふと思い出した過去の私の失敗。
それは私の中を侵蝕して、それにぐわっと吐き気を催す。
私の馬鹿私の馬鹿。心の中であの時の私を責めてもこの感覚が改善されない時は、それを直す秘密の呪文があるの。

「私なんて死んでしまえ私なんて死んでしまえ私なんて死んでしまえ私なんて死んでしまえ私なんて死んでしまえ……ふぅ…」

声に出してそれを言うと、だいぶ気分が和らいだ。
本当に死にたいわけじゃない。
でも、これを言わなきゃ最近は収まらないのだ。



うっかり口を滑らせた私。
うっかり怪我をさせてしまった私。
泣かせてしまった私。



そんな過去の失敗が、今の私の心を占拠した時、言いようもない気持ち悪くて苦しい感情で息を詰まらせる。
誰かを殺したいような殺されたいような気味の悪い不快感は、今となってはこの呪文無しでは拭えなかった。

私の精神は不安定だ。
これが異常なのは私が良く知っている。
こんな縁起でもない呪文に縋るなんてどうかしている。

「いつまでもこんなじゃいけないな」

ふぅ、と息を吐いて、前を見ると、まだ十にものならないような小さな男の子が転がっていた。


(あれ)


なんでこんな所に。という疑問よりも先に、銀の綺麗なその髪に私は見入っていた。
途端に、私の真っ黒な髪が、その暗さが、心の汚さを表しているように感じて、今すぐこの髪を丸ごと全部切り捨ててしまいたくなる。
もう一度その子を見ると、銀の髪の綺麗さと対照的に、それ以外の異常に気づいた。


「赤い…」


真っ赤。全身の赤に私は目を見開いた。

(死んでる…?)

そう思ったけれど、かすかに胸が上下していて「生きてる」ことが分かった。だから…。

「う…んっ…!」


その子を家で治療しようなんて、馬鹿げた事を考えてしまった。


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