※成長カルト君捏造。
あれから数年が経った。
私は僕とサヨナラをした土地で働いている。
店主の人はいい人だし、友達も出来て「幸せ」だ。
…幸せだけど、やっぱり足りない。
「……僕」
僕が、私を幸せにしてくれると言った。
あれから数年が経った今、僕はあんなにいい顔立ちをしていたのだから、きっと格好よくなっている事だろう。
だから、もしまた会うことができなくても、仕方がないと思ってしまう。
けれど、僕に会えない私は幸せのピースが1つ外れて、ぽっかりと心に穴が開いたままだろう。
「…僕」
あれから何年も経つのに、おかしくて、馬鹿で、変かもしれないけれど。
どうしようもなく君が好きなままなんだ。
…ねぇ、僕。会いたい。…会いたいよ、僕…。
「…なまえ?」
「…ん?」
目の前に随分と格好いい男の子が居た。
「やっぱりなまえだ!」
「え、あの…?」
…いやいや、この人誰だ。
こんな知り合い居ないぞ私。
「…ひょっとしてなまえ、分からないの…?」
「えっと、どこかでお会いしましたか…?」
すると彼は、「はぁー…」と深くため息をはいた。
もう一度私に向き直って、私に笑いかけた。
「ねぇなまえ、これ以上思い出さないなら、あの時みたいに首筋を噛んであげようか?」
「…なっ」
なに言ってんだこの子は!
…って、あれ?ちょっと待ってくれ。
…く、び…す、じ…?
「ぼっ、僕!?」
「やっと思い出したの?相変わらず馬鹿だね、なまえは」
「思い出す思い出さないじゃないわよ!だって身長私より高いし…こっ、声だって…!」
「当たり前でしょ?男なんだから」
「うっ…!」
「男」という言葉が、今聞くととても気恥ずかしい。
「だってあの頃の僕じゃあ、なまえは絶対子供扱いのままだからね。…どう、ドキドキする?」
「……僕の、馬鹿」
「なにが?」
「寂しかったじゃない!」
「うん、遅くなってごめん」
そう言って、僕は私の頭を撫でた。
ああ、立場逆転。
「今度こそ、なまえを幸せにするよ」
「…僕と10以上歳違うんだよ…?こんなオバサンでいいの?」
「何を今更。歳は離れているけど、僕はなまえがいい」
「…僕」
「カルト」
「…へ?」
「カルト。僕の名前。もう名前を教えても、なまえを守れるから…。呼んで、なまえ」
「か、…カルト君」
「…なまえ、好き」
そう言って、僕はぎゅうと私を抱きしめた。
私は涙が止まらなくて、僕を強く抱きしめ返した。
好き。
大好き。
…やっと私は、僕と…カルト君と幸せになれたんだ。
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