見返りはいらない。
お金も何もいらないのに。
なんで見ず知らずの僕を助けるんだろう。
仲間でもない。裏の人間でもない。
ただの弱い人間なのに。
「ねぇ、君はなんて名前?」
「言うと思う?」
「そっかぁ。じゃあ勝手に僕って呼ぶね」
「ぼ、く…」
「そう、君の一人称」
「僕の…」
「そう、僕。よろしくね。私はなまえよ」
「…なまえ」
「うん、よろしく」
なまえ。
名前を教えない奴にも名前を教えるし笑顔をすぐ向けるお人好し。
「…なまえって馬鹿?」
「どうして?」
「だって、何も僕に求めないじゃない。なまえには求める権利があるのに」
「求めてほしい?」
「…え」
「僕が望むのなら、求めてもいいけれど…私はちょっと嫌かな」
そう言ったなまえが僕は分からない。
ただ、なまえに名前を教える事が巻き込む事だと、名前を口にしようとした僕を制止した僕が、僕は信じられないんだ。
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