「いったー…」
私の部屋…の上の屋根に直撃しかけたのでなんとかもがいて落ちる場所を少しずらせのはいいけれど、ブロック塀の角に背中をうった。
端が少し崩れた程度ですんだのは良かったもののかなり痛かった。
「うぅ…」
ふらふらと立ち上がって、家の中に入った。
すぐ部屋に入り、ベッドに寝ころんで絶を行う。
背中もそうだけれど、ヒソカさんにやられたお腹の出血がやばい。
内臓とかは大丈夫のようだけれど、このままじゃ出血多量で倒れて大事になる。
なるべく早く治さなきゃ。
「…………」
ヒソカさんのあれがわざとだなんて、よく分かっていた。
それでも、ヒソカさんは私にとって、あの世界のすべてで、私にはヒソカさんしかいなかったのだ。
頼る者が他に居ない状況でのあれは、恐怖で逃げたくもなる。
絶望も、嫌悪も仕方のない事。
それでも、あれはヒソカさんに対する裏切りでは無かったのかだなんて、自分を問い詰めてしまう。
けれど、分かる。
あのままの場合、ヒソカさんはきっとちゃんと私を殺していた。
「…はは」
だからこそ、私はここに帰ってこれたのだから。
それでも、私は…ヒソカさんのいるあの世界が本当に大好きでした。
そしてあなたが教えてくれたこの世界の優しさも、私は好きだから。
だから、きっともう会えない。
私は幸せになる。ヒソカさんが言ったんだもの、強くて幸せな女の子になれる。
だけど、もしまた、再び世界に絶望したなら…その時は。
「……さて、と」
私はぐいっと、伸びをした。
ん、痛い。
血も止まらない。
私の絶は思った通り未完成だ。
それに、別に絶を行えばパッと治るわけじゃない。治癒が早くなるだけだ。
あー、私動揺してるのかな。何やってんだか。
やっぱり病院は行った方がいいよなぁ。なんて言い訳しようかな。
縫って貰っちゃってもいいな。
この傷だけは、なんだかあってほしいから。
そんな事を思いながら、私は部屋を出た。
「……」
その時は…その時は、また。
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