私は将来有望なんかじゃない。
世界に愛された彼に似ているなんてありえない。
彼は勘違いをしている。
でも縋れる者が彼しか居ない今、私は。
「ねぇ、君の話聞かせてくれる?」
「…拒否権は」
「嫌ならいいけれど、…君は拒否しないだろ?」
確信を持ったその言葉は、決して間違ってはいなかった。
確かに私はそれを拒否しない。
だってあなたに教えたい。私とあなたは違うのよと。
*
何をしても駄目な子って居るでしょう?
いくら教えてもできない子っているでしょう?
それが、私だった。
テストでヤマをはればたまたま全部外れる。
選択問題もたまたま1つも当たりゃしない。
たまたま私の前で品切れ。
たまたまボールが当たる。
たまたま新しい学校で周りが男子だらけで友達が出来なくて。
そんでいじめられて。
全部、たまたまたまたま。
…ふざけてる。
運が悪い。
それに加えて、いくら努力をしてもなにも報われない。
「本当に何しても駄目だよね」
「そう、かな…」
「勉強も駄目、運動も駄目。もっと頑張ったら?」
「あはは…」
頑張ってる。
頑張ってるけどどうにもならないんだ。
誰にだって頑張っても無理な事がある。それが私は人より多くて、特技が無いだけ。
…ここまでどうにもならない人を私以外に見た事がない。
勉強が出来なくても、絵が上手いとか運動が出来るとか、他に何かしら特技がある人がほとんど。
じゃあ私がここまで何もできない理由は?
…それを私は、世界が私を嫌いだからと仮定する事にした。
そして他の人が出来ない、唯一できた事が念だった。
「そうしたら、この世界は私を愛してくれるんだって思った」
だからこそ私のいた世界を捨てた。
そしてこの世界を愛そうと思った。
「私、この世界の方が好きだよ」
「…そうかい」
「どう?やっぱり違うでしょう?捨ててやっと、人並みになるぐらいなの。私は」
「いいや、やっぱり君はボクによく似ている」
「そんなわけない!現にあなたは世界に愛されているじゃない…!」
「世界がどうとかは分からないよ。ただね、…あぁ、ねぇなまえ」
「………」
「ボクの話も、聞いてごらんよ」
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