「Nさん、好きです、付き合って下さい」
「うん、とりあえず僕をお姫様だっこするのはやめてもらえるかな」
「嫌です、何故なら私より髪が長いから」
「じゃあ切るから」
「でも駄目です、私より顔が綺麗だから」


私がお姫様だっこしているNさんは男の人なのに女の私より綺麗だ。
思わず見とれてしまう。


「…ん、どうかした?」

Nさんは私がNさんをガン見しているものだから不思議そうに私を見た。
やだ、もう可愛い!


「Nさんが相変わらず私より美しくて可愛いので」
「うん、本当にどうかしちゃったかな」
「Nさ…んぎゃっ!?」


ぐいん、と景色が回転した。
私がお姫様だっこしていたはずのNさんは何故か私の手から抜け出し、逆に私がNさんにお姫様だっこされている。
何これどういうことなの…。


「Nさ…」
「コレが正しい図でしょ?まったく。君の方が手も体も顔もちっちゃくてしかも軽い…そりゃあ同年代の女性に比べたらちょっとばかし力はあるんだろうけどさ、そもそも君が僕以外にこんなことやったら…いや、させないけど…男によってはその気になってすぐさま襲われるということもありうるのに、なんなの君は何がしたいんだい」
「えっと…?」


Nさんが突然早口になった。
どうしちゃったんですか、Nさん。



「これも悪い意味でピュアでイノセントなのかもしれないけど、少しは危機感を持った方がいい。僕だってピュアでイノセントと言われているけれど、好きな子の顔がこんなに近い状態で手を出さない訳がないんだ」
「…へ」


気がつくとNさんの唇が私の唇に押し当てられていた。


「ん…っ」
「…分かった?」


その後超至近距離でそんなこと言われたら、そりゃもう頷くしかなかった。



「…はい」



まるで茹で蛸のような私に、Nさんは再びキスを落とした。


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