私には好きな人がいた。
たまに遊んでくれる、男の人だった。

「シャルくん!」


今日はその人がいた。
だから私は胸を弾ませてシャルくんに近寄った。
この町には、子供は私だけだから、ひどく退屈なのだ。


「今日はっ、今日は何する、シャルくん!」
「…そうだね、今日はかくれんぼをしよう」


にこりと笑うシャルくん。


「オレが鬼だ。名前は隠れていてね」


そう言われてうんと大きく頷いた。
その後、私はシャルくんの車のボンネットに隠れた。
隠れている間にうとうととまぶたが重くなり、その眠気に私は意識を手放した。


「…あれ」

数時間後、私が目を覚ますと知らない景色だった。
しかも何故か私の手に、沢山のお金が握られていた。
誰のだろう。
シャルくんのだろうか。
だったら返さなきゃ。


「シャルくーん?」

車のボンネットを開けて、外にでる。
どこだろう。ここは。
どこだろう。シャルくんは。


手にぎゅ、とお金を握って、私は歩いた。
すぐ街に出て、テレビが目に入った。

そこには私の町が壊滅した光景が映っていた。


テレビの中で、私の知らないだけで、町は巨大な犯罪組織だったこととか。
スラム街の人達から色々なものを搾取していたとか。
数々の悪事がロール状にひたすらながれているとか。
町を壊滅させたのがゲンエイリョダンとかいうのだとか。



そんな事はどうだっていいのだ。



「シャルくん…」


それから私がシャルくんに出会う事はなかった。


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