※死ネタです。




俺達はきっと死への抵抗とか、恐怖が薄いと思う。
『殺し』を日常に取り入れるからにはそれなりの覚悟だってあるのだ。

しかし、彼女は違った。
それは彼女の俺達とは違う、殺しへの認識によるものだろう。

俺達は殺す為に殺すが、彼女は死なない為に殺す。
彼女は死に人一倍恐怖する人間だった。
まぁまぁの名家の殺し屋一家に生まれた事をどんなに恨んでいただろう。
彼女の家は使えない奴は殺す、という完璧実力主義の家だった。
彼女の家族はやはり名家だけあって、ゾルディック家には大分劣るもののそれなりの実力だし、彼女は家から逃げられないのに相当苦しんでいた。


俺は結構彼女がお気に入りだったと思う。
俺に無い感情を持つ彼女に興味があったし、彼女の不安げだったり突然笑ったり怒ったりのころころ変わる表情は見ていて飽きのこなかった。
だから、まぁ…いっかなーと思って縁談を組んだ。
一応名家だから結構すんなり親の許可は得られたし。
「イルミさんの事は好きだけど、私はイルミさんの期待に答える働きをゾルディックではできないよ」と言う彼女に、「別にうちに来たら暗殺はしなくてもいい。家で安全に暮らさせてあげる」と言うと、彼女は「本当!?」と今までで一番の笑顔になった。
彼女は同じ職業であることから、仕事中会う事も多かったが、終始眉をハの字にして、常に不安げであった。
おそらくそれが、敵を油断させられる要因だろうが。本人は気づいてなさそうだ。確かに彼女はそれを除いても、生に対する異様な執着心以外は優秀なのだから。

とにもかくにも、今回の仕事を最後にするはずだったんだ。
何がいけなかったかな。
すぐ辞めさせるべきだったか。
あぁ、もう。


「君、は…」
「ん?」
「あんなに死を怖がっていたのに…どうしてそんなに今穏やかなの」


彼女は念を受けた。
0時きっかりに死ぬらしい。


ねぇ、あんなに生きたがってたじゃないか。
あんなに死ぬのを恐れてたじゃないか。


「なんで…かな」
「……」
「あのね、あのね…」
「……うん」
「きっと、イルミさんが居るからだと思うの」

好きだよイルミさん。
ありがとう。
本当はイルミさんと結婚して奥さんになりたかったけど、イルミさんが私を看取ってくれただけで、私は幸せに逝ける。
ありがとう、本当にありがとうイルミさん。
愛してる。




…ねぇ、そんな言葉要らない。
どうして、動かない。もしまた動くなら、そんな言葉なくても俺は。


「…なまえ」

お気に入りだった。
違う、お気に入りとかそんなじゃなくて。


誰よりもきっと、君を愛していたよ。


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