「…最近、眠れないの」
眠い、けれど眠れない。
最近ずっとそんな感じだ。
病院にでも行こうか、なんて思いつつ…その前にゴンさんに相談した。
「…だから最近顔色悪かったのか」
ゴンさんが顔をしかめた。
ごめんねゴンさん、心配かけてしまって。
「…なまえ」
「え?」
ふわりと浮くような感覚がした。
上質の絹に包まれたようなやわらかくあたたかなぬくもりの正体に、私は目をやった。
「ゴンさんの…髪の毛?」
綺麗に真っ黒なその髪は、私を優しく包み込んだ。
まるで、お姫様が寝るベッドに感じるくらいに、柔らかくて気持ちいい。
気が付くと、段々まぶたが落ちてきた。
ああ、ねむれる。
「ゴン、さん…」
「なまえ…もう、おやすみ…」
私はゴンさんの髪に包まれて久しぶりにゆっくり眠る事ができた。
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