一年に一度だけ会える、彦星様と織り姫様。
雨が降れば、それさえかなわない、そんな脆い関係。
「あのさ、一年に一度しか会えなくて、しかもそれもどうか分からないわけでしょ」
「そうですね」
「それって、夫婦っていうのかなぁ」
私はお店の七夕キャンペーンで貰った、「たなばたのおはなし」と書かれた絵本のような小冊子を読みながら風君に疑問を投げかけた。
「そうですね、夫婦で間違いは無いでしょう」
「なんで?」
「こちらの世界では、書類がそのままであればどんなに仲が悪くても、別居状態でも夫婦として成り立ちます」
「…そんなの」
「しかしお二人は、そんな形だけの夫婦ではなく…、彼は会えない時間も彼女を想い、そして長い間同じ人を思い続けています。それはまた、彼女も…」
「………」
「普通、人は離れていれば気持ちは段々薄らぐものです。しかし、彼らは違う。…それは、彼らはとても素敵な夫婦だからなのでしょう」
「……そっか、いいね夫婦」
「そうですね」
私はチラリと風君を見た。
変わらず、笑顔で空の星を見上げている。
…短冊の内容は、「風君の鈍感を治してください」で決まりだわ。
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