「確かにオレ以外は君が現れても無関心だよね」

こんなに不思議なのに。
私が相談をすると、シャルナークをそんな風に口にした。

「ねぇ、シャルナーク…、来ても戻っても認識されないように…私、もしいつか戻れなくなったら…そんな風に向こうの世界の私は誰にも気づかれずに消えちゃうのかなぁ…」
「…そういえばさ、いつも突然現れたり消えたり…すぐ知りたい事ばっか聞いてたから、聞いてなかったけど…君の名前は?」
「え、私…?…なまえ。みょうじなまえ」
「名前の感じからしてノブナガみたいにジャポンみたいな名前の読み方かな?えーっと、なまえが名前でいい?」
「う、ん…」
「じゃあなまえ。もしなまえが向こうの世界に帰れなくても、こっちの世界に来られなくなっても、全く別の世界に行ったんだとしてもオレは依子を覚えてるからさ」

(まぁ、本当はなまえの世界の人がなまえの行き来をきちんと認識してるのが一番なんだろうけど)


「オレが言っても気休め程度にしかならないだろうけどさ」
「そんな事ないよ…。…ありがとう」





カチ、という音がして依子は今日も消えた。
人がふっと突然居なくなっているというのに、周りの人間は気づきやしない。


(確かにこれは、異常…だよなぁ)


彼女は念能力者じゃないけれど、彼女じゃなく、彼女のあのー…。


「あ」


結局昨日の聞かずじまいだったな。
まあ、いいか。また、明日…。






…戻ってきた、か…。

「…ふぅ」

例え向こうの世界の君に言われた事でも…嬉しかったよ、シャルナーク。

「なまえ!」
「ち、茅琉…?どうしたの電車でそんな大きい声だしてー」
「どこ行ってたの…?」
「…え?」
「いきなり消えて…どこ行ってたの…?」


震えるような、泣きそうなような声で話す茅琉に、私は一瞬言葉を失った。


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