そんな出来事を経て、現在私はこうして毎日のようにトリップしている。
原因不明、条件は5時の電車に乗る事。
トリップの制限期間はピッタリ30分。
発生時刻5時30分。

…とまぁ、そんな乗ってるうちに知る事以外、結局何も分かっていないわけだ。


「はぁ…」


おっと、電車内でため息はいけない。
静かに、静かにっと。


「…………」
「逃げなかったんだ」
「…まぁ」


逃げようとは思いましたよ、ええ。
既に時計の針は5時30分をさしていた。


「あのさ、これはオレが1日考えた結果なんだけど…」
「………」
「君は、此処以外から来たんだよね?」
「………」
「君にとって此処は…存在しない場所なんだろ?」

なんとまぁ、このシャルナークという男は頭がいい。
常識的に考えて、こんな結論に至るなんて妄想もいいところだ。
ただ、今回はそれは正しい。
ただの真面目に頭がいい人ならば至らない結論にたどり着くなんてさすがだ。

「殆ど正解です」
「……」
「私は別の世界から来ています。自分からではありませんけど」
「自分からではないって…?」
「私はただ電車に乗ってるだけなんですよ。それなのに、なんでか途中で此処に居るんです。まぁ、30分したら戻れるんですけど」
「ふーん…」

シャルナークは口元に手をやって、まじまじと私を見た。

「異世界人って貧弱そうだね」
「はい、とても。…というか、あの」
「ん?」
「信じるんですか…?」


あんな結論に至れたシャルナークに言うのもあれだが、普通に考えれば、妄想癖のある電波少女って所だろう。
よく信じられるものだ。
実際私も自分が体験しているこのケースを除けば絶対に信じられない。


「ねぇ、オレの名前は?」
「え?シャルナーク…?」


そこまで言って、慌てて口をふさいだ。
まずい、かも。


「なんで知ってるの?」

シャルナークは、びっくりしてるとか不思議そうとかそんな表情ではなく。
してやったりというか、面白いものをみつけたというか、どうだと言ってみせるようなそんな顔だった。


「君は初めて見かけた時からずっとオレを見てたよね?この世界とは違う世界から来た君が」
「えっと…」


「ねぇ、どうしてオレを知ってるの?」



そう言ったシャルナークは、至極楽しそうだった。


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